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「だから言ったのに」
言うのが遅いんだよ!言うならもっと早く言ってくれないと。事故が起きてからじゃ遅いんだよ!
彼女は哀れな。或いは愉快なものでも見るかのような複雑な心境を混ぜ合わせた表情の色を出しているが、俺としては腹立たしさが余計に増すだけだった
殴りてぇ、久しぶりに切れちまったよ。本当におバカさんですね、俺を怒らせた奴は昨日ぶりですよ!!
具体的に言うと、あのクソ生意気な妹が俺のアイスを食べた。あの時以上の怒りを感じる
「(なんじゃ!なんじゃこれは!)」
俺の足元にある一定範囲の地面が輝き、何やら複雑怪奇な文字が幾何学的に出現し魔法陣の形になっていた。
どうやら魔法陣の外に出られない様に俺を封じ込めているみたいだ。結界というやつに違いない。生意気な
「出たいですか?出たいですよね?出たくないはずがないですもんね?」
三段活用で余裕そうに質問してくる白い彼女
「(オラァ!さっさと出せ!警察呼ばれてぇのか!!)」
俺は頭脳をフル回転させる。そして導き出すたった一つの冴えたやり方。それはこの魔法陣から抜け出す為に啄木鳥を真似て伸びた牙を空間に高速で何度も叩きつけたのだ。
雨垂れ石を穿つという言葉もある。頑張れば水も石を穿つことがあるとかそんな感じのやつならば、それに習い俺のこの硬くてたくましい牙が一極集中で攻撃すればどんな堅いものでも破れるはずだ
俺は怒ったぞーーー!目にものみせたる!!
そんな意気込みも虚しく、ガッ!ガッ!ガッ!ガギン!っと繰り返していると金属が強くぶつかり砕けた音がした。この場に貴金属の類はない。それは俺の口元から歪に掻き鳴らされていた。そしてそれが歯の先端が欠けた事による音だと理解した
字面通り歯が立たない。立つ瀬がない。雨垂れっていうか甘ったれな考えだった。あれれ〜おかしいぞ。
俺、凄い強い生命体なんだよね!?究極生命体龍王アーカーシャ様なんだよね!!?淡雪ちゃん!?
話が違う。転生初日から難易度高すぎるよぉ!もう終わりだぁ!おしまいだぁ!
「(俺の。俺の王の牙がぁぁぁ)」
俺の声だけが悲しく辺りに木霊していた
「幾ら貴方でもここは絶対に抜けられない。この魔法陣は最上級の結界防壁。超高速再生機能付き」
「何より貴方にしか効かない縛りよ。今日の為に何年もかけた」
制約と誓約というやつだろうか。恐らく死後の念とかもある世界に違いない。ここは!
「これで自分の状況は理解できたよね?」
ここで初めて彼女は小さな笑みを浮かべた
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