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それにしても淡雪ちゃんより幾分か大人びた顔つきをしている割に小さいな。ちなみに胸の話じゃない。身長の話だ。俺はそういう他人が気にすることに関しては凄い気を使うんで、って誰に言い訳してんだ、俺。
だが本当に小さい。
地面に這いつくばる俺と少女の目線が同じ高さ‥‥‥なんなら、僅かに俺は目線を下に下げている。つまり、あっちが小さいんじゃねえ。俺が大きいんだ!
今の俺って巨人なのか。なんか駆逐されそう。硬質化覚えなきゃ
「(そういえば小人といったら、なんだかこの状況って童話かなにかで見たことあるな)」
……内閣評議会から子供部屋まで。どこでもみんなが読んでいるガリバー旅行記だっけか。異世界に来てガリバーさんと同じ経験が出来るなんてなんだか著作権法に引っかかないか心配だぜ。
言い知れぬヤキモキを心に秘めながら、眼球だけを動かして自分の身体を確認してみる
『アーカシャーと呼ばれる龍王として顕現‥‥‥』
淡雪ちゃんの言葉を今になって思い出す。つまりはそれで目の前の光景に納得出来てしまう俺の適応力は中々のものではないだろうか。
流石に巨大な毒虫とかになっていたら、受け入れられなかったかもしれないがな……
「(巨人じゃねえ。龍だったか)」
頑強そうな緋色の鱗がびっしりと身体中に敷き詰められている。指からは巨大で凶悪で何でも貫きそうな槍と見間違えかねない爪が生えている。
背中の肩甲骨辺りに力が入れられる事に気付いたので、軽く力を入れて動かしてみると、バサバサと何かが羽ばたく音が耳に入った。
翼が存在しているらしい。尻尾も生えていて同様だ。人間では決して味わえない不思議な感覚だが、こいつ……動くぞ!
口元の噛み合わせが少し刺すように痛くなったので舌を使って口内を慎重に触れ回ると無数の尖ったモノがある事が分かった。これは牙か
「(さてと)」
完璧とはいかないが自分の身体をある程度は把握出来た。後は慣らしだな。
俺は起き上がる為にさっきよりも身体に力を込める。先ほど確認したが、身体を縛り付けていたのは何重もの細い鎖だ。この程度ならば無理矢理引きちぎれるだろう
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