六話 出発

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「忘れ物は無ですね?」 「多分…」 僕は、真新しい礼服に腕を通しながら荷物の最終確認をしていた。 「レティス様の礼服、良く間に合いましたね。」 「大至急でって頼んだら、快く引き受けてくれたよ。」(金の力) 「快く、ね」 僕の答えに、ハウゼンが疑いの目を向けてきた。 「言っておくけど、脅したりはして無いよ。お前と一緒にしないでね。」 「そんな事は言っておりませんよ。それに、脅し何て失礼な。話合いと言ってください。」 「話合い、ね」 僕がさっきのハウゼンの様に答えると、ハウゼンがニッコっと笑ったのでそれ以上は何も言わない事にした。(怖かったので) そんなやり取りをしていると、誰かが、扉をノックした。 おそらく、ルナだろう。 「レティス様、べノー様、馬車の準備が整いました。」 「ありがとう。すぐに行くよ。」 やっぱりルナだった。 良かった、父様じゃ無くて… 父様だったら朝から気分が最悪になるところだった… 「レティス様こちらはどういたしますか?」 「それは…」 ハウゼンが見せてきたものは、折りたたみ式の弓だった。 「弓の練習はして無いから剣だけで良いかなぁ」 「本当に良いんですか?練習してい無くても、貴方は弓使いですし、そこそこ扱えると思いますが。」 「でも、矢がなきゃ意味無いって。」 「矢が無くても、最悪何とかなるでしょう。一応お持ちになっておいては?」 「…わかった。そうする。」 僕はそう言いながら、弓を受け取った。 弓使いなのに、弓を持った事なんてほんの数回しか無い。 ましてや、射った事など一度も無い。 「持ってっても意味無い気がするんだけどなぁ…」 そう僕が呟いたのを、聞かなかった事にしたハウゼンが僕を急かすように、 「それでは、早く馬車に乗りましょう。」 と言って荷物を持って、早歩きで行ってしまった。 「はぁ…行きたくない…」 僕は、ため息をつきながら後に続いた。 馬車の前に着くと、ルナと弟のグレンが見送りに来てくれていた。 「兄様、お気をつけてくださいね。べノー先生、兄様を宜しくお願いします!」 「グレン様、お任せください。レティス様のサポートはしっかりいたしますので。」 「ハウゼンのサポートは嫌な予感しかしない…」 僕がボソッと言うと、ハウゼンが 「何か?」と返してきたので、苦笑いをしながら、首を横に振っておいた。 「レティス様、道中お気をつけて。」 ルナは相変わらず、無表情だが、僕を心配してくれているのはわかった。 「ありがとう二人とも。行ってきます。」 僕は笑顔でそう答えると、馬車に乗り込んだ。
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