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ニ話 弟妹
僕はいつものように、空をながめていた。
でも、少しだけいつもと違う事がある。
それは、ここが森では無く訓練場で、なおかつ僕が息切れしているという点だ…
剣を習うという話が出てから、3日がたったからハウゼンもそんな話は、とっくに忘れていると思っていた…
思っていたのに…
今日の朝になって突然
「レティス様この前の話、本日の午後からでよろしいでしょうか?」と聞いてきたので、
「この前の話?」となんの事を言っているのかわからないふりをした。
すると、少し強めの口調で「剣を習うという話ですよ!」とかえされた…
だから、午後になる前に森に逃げようとした…
が、屋敷の門で待ち伏せされていた。
そして、今にいたる…
「ハウゼン、一般兵程度の実力だって言わなかった?」
「言いましたが?」
「嘘つき」
「嘘などついておりません」
「嘘だ…こんな強いのが一般兵にいたら、この国は軍事国家になってるって!」
「…そんな事はいいので、休憩をとるなら日影に行ってください。」
「動きたくない…」
ハウゼンはスパルタだった、そして一般兵なんて嘘だった…普通に騎士レベルはあった。
体中が痛い、今日はもう動きたくない…
このままここで寝ようかなぁ
そんな事を考えていると、「クスクス」と嘲笑する様な笑い声が聞こえてきた。
面倒なのがきたなぁと思いながら、起き上がると、そこには僕の双子の弟妹がこちらを見て「ヒソヒソ」と話ていた。
ハウゼンは二人の存在に気づくと、二人に軽く会釈をした。
すると、二人はこちらに歩いて来て
「べノー先生ごきげんよう、こんな所で何をなさっておられましたの?」と妹のシェリア(9歳)が言った。
その後に続いて、弟のアレク(9歳)が
「先生は剣術もできるのですね、お時間があるのでしたら、自分にも稽古をつけて欲しいです!」と言った。
僕の存在は完全に無視だ…
「アレク様、シェリア様こんにちは、今はお二人の兄上の剣の稽古をしていたところです。アレク様も、ご一緒しますか?」
「先生は面白い冗談を仰るのですね、あの愚図は先生の剣をほとんど受ける事すらできていなかったwwあんなのは剣術とは言いませんよ、先生もあんな愚図など放っておけばいいのにwどうせ何もできない無能な愚図なのですからww」と弟は嘲笑った。
妹も、「そうですわ、先生はお優し過ぎます!あの愚図は何をしても意味など無いのですから、愚図の為に時間を無駄になどせず、私に魔術を教えてくださいませ!その方がよほど有意義ですわ!」と僕を馬鹿にしていた。
まあ、仕方が無いと思う。
アレクもシェリアもグレンと同位の高位のジョブで、高い魔力を持っている。
まあ、貴族ならそれが普通なんだけど…
ちなみに、アレクはパラディンでシェリアは聖女だ。
僕の弓使いじゃあ、太刀打ちできない。
だから、何を言われても仕方が無い、それに愚図なんて言われすぎて、もう何も感じない。
そんな事を考えながら、二人の声を聞き流していると、僕が無反応なのに腹を立てたのか、
アレクが「おい!愚図!聞こえているんだろう?先生の邪魔をしている自覚があるなら、さっさと離れのお前の部屋に帰れ!」
そう言うと、シェリアが嘲笑いながら、
「アレク、この愚図は先生のお邪魔をしている事さえわかっていないのですわ!だって自覚があるのなら、先生に稽古を頼んだりするはずありませんもの!」と言った。
シェリアの発言を聞いて僕は少し、ムッとした。
だって、剣術は僕が頼んだのではなく、ハウゼンが半ば強引に始めた事だから。
まあ、面倒だから黙っているけど…
僕が、少しムッとしながら黙っていると、ハウゼンが、「剣術は私からお誘いしたのですよ、それに、レティス様には才能がござますよ、私の剣を一時間も受けていられたのですから」と言った。
その言葉を聞いて、僕は叫んだ。
「やっぱり、一般兵レベルっていうのは嘘だったんじゃないか!」と。
するとハウゼンは「おっと」と言って目をそらした。
弟達はというと、僕が二人を完全に無視していたのに相当腹を立てたらしい、
「もう、知りませんわ!行きましょうアレク!」とシェリアが言うと、
「そうだね、僕達の貴重な時間をこんな愚図の為に無駄にするわけにはいかないからね。」そう言うと、そそくさと訓練場をあとにした。
やっと面倒くさいのがいなくなった。
そう思ってまた、地面に寝そべると、
ハウゼンが
「さあ、休憩はもう十分でしょう。稽古の続きをしますよ!」と言うので、逃げたかった。
まあ、無理だけど…
僕は、嫌嫌「わかった」というと、立ち上がって木刀をかまえた。
その日の夜は全身が痛くて上手く寝付けなかった。
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