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35話
「げっ、かはっけは」
咽喉で膨れ上がる異物感と吐き気に激しくえずく。
何してるんだろ俺。何でこんなことしてるんだろ。頭が朦朧とする。
子供たちのためだ。子供たちのためだ。本当はしたくないこんなこと。
呪文が呪詛と化して魂に根ざす。
体の芯と精神の核を雁字搦めにする。
精液がこんなに苦いなんて初めて知った。愛着で中和されるせいか、スワローの出したものなら不思議と甘く感じるのに……生臭くてエグい苦味が口一杯に広がっていく。
パニックの先触れ。何かに縋ってないと頭がおかしくなりそうだ。
ドッグタグはどこだ?スワローとおそろいの、アイツの誕生日にくれてやった俺の手作りの……
「俺のタグどこやった」
「何やそれ」
ピジョンが口走る譫言に亡霊が鼻白む。
「コレやろ、ちぎれてもた」
暗闇が懐から出したタグを得意げにたらす。指で弾くとチィンといい音が鳴る。心を浄める澄んだ音色……瞼の裏にスワローの面影が呼び出される。
「返せ」
暗闇がドッグタグを無造作に振り回し、ピジョンの鼻先に大股開きでしゃがみこむ。
「口の利き方がなってへんのー」
「!ぐはっ、」
鳩尾にブーツの爪先が突き刺さり、衝撃が爆ぜる。
目と鼻の先にドッグタグがぶらさがってるのに手も足も出ない、暗闇はピジョンが後ろ手に手錠を噛まされてるのを承知でタグの鎖をぶん回す。風切る唸りを上げて旋回するタグ、銀に光る残像の軌跡。
次の瞬間、ピジョンは捨て身の行動をとる。
前のめりに顔を突き出し、暗闇の手に噛み付こうとしたのだ。
「おっと」
暗闇が嘲笑って手を引っ込める。
惜しくも紙一重で届かず空振り、上下の歯が虚しくかち合うだけで終わってしまった。されど一回で諦めず、くり返し挑戦する。
右から左から正面から、暗闇が面白がり出しては引っ込めるタグを口で奪おうと悪あがく。上下の歯がうるさくかち合い、焦りと怒りで全身が燃える。
「噛み付き芸か」
「口輪持ってきたろか」
うるさい。ほっとけ。タグに意識を集中、体当たりをかます。またしても空振り、体勢が崩れてずしゃりと突っ伏す。顎から行って瞼の裏で火花が爆ぜる。
見苦しくていい、かっこ悪くたっていい、笑いたきゃ笑え。それは大切なモノ、俺とスワローを繋ぐ絆なんだ。
「汚い手でさわるなよ、値打ちのわからない奴が持ってたって意味ないだろ」
「値打ちて。このボロが?」
亡霊が鼻で一蹴する。
「えらいむきになるやん、ひょっとして恋人からのプレゼント?」
暗闇が囃す。
ピジョンは答えない。コイツらに可愛い弟の情報を教えるなんて冗談じゃない。
切羽詰まった形相で、なりふり構わずタグを取り返しに行く。が、後ろ手を封じられていてはたかが知れている。
目の前を振り子さながら行き来するタグに憎たらしいのに憎みきれない弟の面影が重なり、狂おしい想いが募り行く。
「それは俺の、だ、大事なものなんだ……他のならやる、全部やる。ポケット裏返して好きなだけ持ってけよ、でもそれは返せよ」
情けないな、俺。声が震えるじゃないか。身体も震えてる。怖い。おかしい。助けて誰か。どこだよスワロー、何で来ないんだ。
『アイツらになんかされたらすぐ呼べ』
薄情者。
『ボコボコにしてやる』
裏切り者。
子供の頃は助けにきてくれたじゃないか、真っ先にとんできてくれたじゃないか。
何で今はいないんだ、きてくれないんだ、俺をひとりぼっちにしとくんだ、俺のこと嫌いになったのか、お前の名前間違えて呼んだから愛想尽かしたのか。
ごめんよ。謝るよ。
後生だから許してよ俺のスワロー、可愛いスワロー。
亡霊と暗闇の声はよく似ていて判別が難しい。口調の温度差で、辛うじてどちらかわかる程度だ。
「先手はどないする。ジャンケンで決めるか」
「ずるいわあんちゃん、俺が弱いの知っとるくせに」
「ほな譲ったる、さっさとしぃ」
「前と後ろから挟み撃ちやな」
ブーツの靴底がコンクリを摺り、暗闇が後ろに回る。下着ごとズボンをひん剥かれ尻が露出、ピジョンの声が上擦る。
「お、前ら、男を犯すのか」
スワロー以外の男を入れたことがない。スワローとしかやったことがない。極大の生理的嫌悪がぶり返す。
裏切りたくない。
お前以外に抱かれるなんて冗談じゃない。
「とんだ変態、だな。子供でも男でもお構いなしかよ、悪食の獅子どもめ。そんなに穴が好きなら蜂の巣に突っこんどけよ、笑える位腫れるぞ」
前を向け。虚勢を張れ。醜態をさらすな。スワローならどうする?俺は兄さんだ、手も足も出なくてもせめて気持ちでは負けたくない、スワローに恥じるようなまねをしたくない。
俺は兄さんだから。
最後まで兄さんでいさせてほしい。
「お前ら、のことは、先生も知ってる。他の賞金稼ぎにもネタが回ってる、じき押しかけてくるぞ。呑気にレイプなんかやってる場合かよおめでたいな、自分の足元が見えてないのか」
恐怖と緊張で鈍重に痺れる舌を叱咤、必死に動かす。ハッタリをかまして時間稼ぎに徹する。
無理だ、限界だ。感情が決壊しそうだ。
教会を出た時点では子供たちの監禁場所など知らず神父とは喧嘩別れ、全部デタラメだ。
「どのみちもう詰んでるよ、お前らの首には多額の賞金がかかってる。派手に暴れたのが仇になったな、漸くツケを払うときがきたんだ。今すぐ子供たちを解放するって約束するならとりなしてやるぞ、賞金稼ぎとお前たちの間に立って」
「上から目線きしょ」
「!痛ッが、」
頭皮が毟れるような激痛。暗闇に後ろ髪を掴まれ、へし折れんばかりに仰け反る。
膝で脚をこじ開けられ、固く閉じたアナルに怒張の先端がめりこむ。
「よせ」
咽喉が引き攣る。
極限まで目を剥く。
嫌だスワロー、お前を裏切りたくない。
肉が裂ける激痛に悲鳴が迸る、ならしもせず一気に突き入れる。
「あっ、ぐ、ぁが」
凶器じみたペニスがアナルをみちみちと押し広げ、内腿をぬるい血が伝っていく。
「なんや……処女ちゃうんかい」
熱い。苦しい。スワローじゃない。スワローじゃなけりゃただの異物だ。
手錠がうるさく鳴って金属の輪が食い込む、手首に擦過傷ができてひり付く。
男に強姦されている現実が、肉体以上に心を痛め付ける。
「何、でこんな事」
痛い。苦しい。全身の毛穴が開いて大量の脂汗が噴き出し、生理的な涙と洟汁が混ざって滴る。
ゲスで外道な双子はただ笑っている。
「せっかく狩った獲物、腐らせてまうんはもったいない」
亡霊が唇をなめる。
「あ、が」
巨大なペニスが括約筋の抵抗を突破して直腸を犯す、痛すぎて勝手に涙が出る、下肢が生木のように引き裂かれて内臓を圧迫、抽送のたび新鮮な激痛が爆ぜ散る。
体の中からライオンに食われていく。
「あっ、待っ、ぐ、はぁ」
はらわたから食い荒らされていく。
「はぁ……血ぃでぬるぬるして気持ちええ。ええ塩梅に締め付けてきよる」
ピジョンの肉を夢中で貪り、勢いよく杭打ちながら、暗闇が感に堪えぬ吐息を零す。欲情に掠れた囁きがおぞましい。
「っは……」
生まれて初めて受け入れたスワロー以外の男、スワロー以外のペニス。
成す術もなく男に犯される。
子供をさらって売るような外道に力ずくで組み敷かれ、凌辱される屈辱。
「ンぁ、ぁっあッ、ァっふ」
息の仕方を忘れて喉が詰まる。下肢に響くせいで瞬きもできない。
激痛で脳髄が焼ける、膝裏がわなないて上体が傾ぐ、暗闇がピジョンの腰を掴んで尻を犯す、溢れる血を潤滑油代わりに粘膜を巻き返し前立腺を叩く。
「んっ、ぐ、ぁ痛ッぐ、ぁンぐ」
唇をキツく噛み、こみ上げる呻きと喘ぎを押し殺す。
「どうしたのピジョンさん、大丈夫?アイツらにいじめられてるの?」
「泣いてるの……?」
壁の向こうからチェシャとシーハンが心配する。
舌を噛まないように注意し、心優しい子供たちに途切れ途切れの声を返す。
「だい、じょぶ、だからっ、心配しないで、あぐッ、んぐ」
手が自由なら口を塞げるのにそれさえ許されない、ピジョンは唇を噛んで責め苦に耐える、切れた唇から口の中に滲み広がる血、鉄錆びた味に噎せそうになる。
子供たちは何も知らない、壁ごしで見えない。
泣いて叫べば怖がらせるだけ、どうせ犯されるなら傷付くのは俺だけでいい、俺が全部受け止めれば丸くおさまる、子供たちは修道女が待ってる家に帰って元気に遊べる。
「ッは、ぁがッ、ンぅっ」
チェシャ、シーハン、ハリ―……袋の中の子供は無事だったのか?
焦点を結ぼうとしたそばから散らされる思考を手繰り、息を荒くしながら正面に問いかける。
「お前っ、が、脅しに使った、ッは、袋の中の子、は、どうしてる」
暗闇が口笛を吹く。
亡霊が首を掻く。
「犯られとる最中までガキどもの心配かい、あきれたお人好しやな」
「答え、ろ」
「あのガキなら気絶しとったで。擦り傷以外に外傷あらへんから心配すな、隣の部屋に放りこんどる」
よかった。
泣きたくなるような安堵が広がるその間も暗闇はピジョンを犯し続ける。
「あッ、ァっあッふぁっ、ンぁっァっ、ンっぐ」
オスの顔で舌なめずりして腰を掴み、抉りこむように突き入れ、前立腺を叩きまくる。
「たの、む、ンぁっぐ、猿轡してくれッ」
声。
嫌だ。
聞かれたくない。
「詰め物されんのが好きか、ド変態が」
「ええ声聞かせたれや、ガキどももドン引きじゃ」
羞恥で全身が火照る、独りで堪えきるのは無理がある、布でも何でも突っ込んでほしい。みっともない声―感じ始めた喘ぎ―聞かせたくない。
『お願い見ないでピジョン』
母さんがいじめられてる。ベッドの上で男に犯されて泣いている。
あの時の母さんそっくりの声が、口からひっきりなしに出ている。
「早く、ぁぐ、ふさげ、おねが、ッぐ、んンっ」
回らない呂律で、掠れきった声でくり返し懇願。前は萎えたまま、勃ち上がる気配もない。
耳を塞いでくれ、聞かないでくれ、知らんぷりしてくれ、俺のことなんか忘れてくれ、なかったことにしてくれ。
ピジョンは狂おしく祈る。
自らの漏らす声が、息遣いが衣擦れが、どんな些細な物音も檻の中で膝を抱えた子供たちの傷痕とならないように祈る。
祈って祈って報われず、願って願って叶わず、上体を突っ伏し肩で息するだけになった青年のアナルに怒張を抜き差し、暗闇が興ざめしてぼやく。
「コイツ全然勃ってへん」
「ほならええもんやる」
亡霊が懐から取り出したのは細身の注射器とガラスのアンプル。無慈悲になぶられ涎と汗に塗れた顔が戦慄に凍り付く。
栓を外した容器の口に針先を浸し、勢いよく吸い上げていく。
「何するんだ」
「知り合いにもろた、気持ちようなるお薬や」
「ドラッグ……」
「媚薬って表現したほがロマンチックやろ」
スワロー。
先生。
母さん。
薬漬けで犯されるのは嫌だ。
亡霊がゆっくりとポンプを押し込んで雫を飛ばす。
後ろを貫かれた状態では暴れて退けるのも無理、小刻みに息を弾ませる。
スワローは日常的にマリファナを喫っている。煙草のように巻いて、スタジャンのポケットにストックしてるのだ。
一方ピジョンはドラッグを服用した経験など皆無、潔癖な人柄で激しく嫌悪している。
「変なものさすな」
「せやかて勃たんやろ?いややいやや痛がるだけじゃ白ける」
「どうせなら3人で楽しまんと」
注射器を構えた亡霊がにこやかに諭し、暗闇が首を伸ばして双子の片割れの唇を啄む。ピジョンにはそれが、口元の返り血をなめあうように見えた。
「やめてくれ」
しどろもどろ首を振る。
「そんな物ささなくても大丈夫、ッあ、ちゃんと感じる、ンっァ、片手でいい使わせてくれこすって勃たせるから」
恐怖で頭が真っ白になる。
「待たせない、すぐやる、クスリだけはいやだあっちいけ、向こうやってくれ」
子供の頃に見たはずもない光景がフラッシュバック、嵐の夜の惨劇、恐ろしい形相の男が母を組み敷いて注射器を腕にさす……
「自分でやるッ、できる、ァあ、信じてくれ」
ちぎれんばかりに首を振る、尻を犯されながら注射を拒む、針から飛び散った雫が頬にかかって冷たい、亡霊が注射針の先端をピジョンの肘の内側に潜らす、無機質に冷たい針先に圧がかかる。
「ちくっとすんで」
青く浮いた血管の一点に、銀の針が沈んでいく。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
亡霊は手際がいい。
皮膚を貫く疼痛に続き、血管に透明な液体が注入されていく。
「即効性や」
注射器の中身が水位を下げる。
空になる。
「ぁ…………」
血流に乗じて全身に巡るドラッグ。鼓動が一際強く打ち、一瞬眼球が裏返る。
委縮した股間に一気に血が集中、急激にペニスがもたげていく。
「はッ……はッ……」
乳首がピンと尖り、大臀筋と内腿が不規則な痙攣を起こす。
苦しい。
心臓が飛び出そうだ。
全身の肌が性感帯に造り替えられる。
鼓膜の裏側で鼓動が鳴り響く、視界が撓んで歪んで極彩色のハレーションに飲みこまれる。
「効果グンバツやな」
瞼の裏に坩堝ができる。
赤と青とオレンジと紫と緑と黄色とピンクと黒、あらゆる色彩が混沌と渦巻いて酩酊を誘い奈落へ引きずり込まれる。
亡霊と暗闇が声をそろえてせせら笑い、ピジョンの股間を視姦する。
粘着質な視線が二重に絡み付き、ペニスが固く屹立。
「忘れとった。返したる」
暗闇が亡霊にドッグタグを投げ渡す。
亡霊は意地悪く含み笑ってキャッチ、タグの鎖をピジョンのペニスに巻き付けていく。
「やめて、くれ」
薬の効果で瞳孔が散大、鳩の血色の虹彩が鮮烈に輝く。
前と後ろが物足りずに疼く。心臓が異常に滾り立ち、全身に血を送り出す。
「は…………、」
細胞一個一個が沸騰する。
大脳で過剰分泌されたドーパミンがもたらす圧倒的多幸感に溺れ、四肢がぐんにゃり弛緩。
外気にやすりがけされピンク色の乳首が勃ち、感度を増した粘膜に鎖が食い込み、束縛と圧迫の激痛を与える。
スワローとペアのタグ、俺たちの絆、それが今亡霊の手がぐるぐる巻きにされていく。
目に映るものを否定したいが、現在進行形の痛みが現実逃避を許さない。
「痛ッが、いた、死ぬ、ほどけ……無理、なんでもする、しゃぶるから、口でイかせるから」
「大事なタグさかい、なくさんように大事なトコに巻いとかな」
「キツ~~~~くな」
暗闇が背後から茶化す。華奢な鎖が根元からペニスを縛り上げ、残忍に射精を塞き止める。
「かわええやん。よお似合っとる」
「!!ぁっ、あ」
亡霊が愉快げに笑ってタグを弾き、刺激で尿管が締まる。
媚薬で極限まで性感を高められた身体には、どんな些細な刺激も拷問だ。
汗みずくの虚ろな目で、鎖で締め付けられたペニスを見下ろす。
無邪気でいられた子供時代の思い出が、アイツのふてくされた顔が、母さんの優しい声が、粉々に打ち砕かれた。
「こっからやで」
亡霊や優しく呟き、鎖に巻かれて充血するペニスを緩やかにしごきだす。鎖の玉が転がり、めりこみ、強く締まって粘膜と尿管を圧迫する。
「ぁっ、ぁあっ、ンぁっ、そこいやだ、やめ、ふぁっンぁ、ぁっあアッあ」
指と鎖とタグの錘が尖ったペニスを苛む、鈴口がぱく付いてカウパーがしとどに滴る、ドロリと濃厚な白濁が鎖とタグを汚す。
俺のタグ。
スワローのタグ。
「やめろ、やめろ」
こみ上げ、あふれ、滴る。
思い出ごと穢されていく。
「そっちはだめだ、逸れろ」
暗闇に貫かれたまま、あとじさるのは不可能。
体の部位で数少ない言うことを聞く首をさかんに打ち振り、鈴口から垂れ流しのカウパーをタグに至らせまいと死に物狂いで祈り、念じ、泣き叫ぶ。
「はやくといて、はずせ、こんなやだ、あぁあ」
カウパーの濁流がドッグタグを浸す。
「ばっちいな」
暗闇と亡霊が顔を見合わせ嘲笑する。
鎖を引く。
締める。
引っ張る。
強弱と緩急自在に、馬首を手綱で御すように、哀れなペニスをさんざんに弄ぶ。
「可愛く飾ってもらえてカリ首振って喜んではる」
サディスティックな愉悦に酔い痴れ、亡霊の唇が綻ぶ。
「っ……」
「よそ見すな」
「!や、止め、はァあっん」
暗闇が背後から脚を割り開いて固定、ドッグタグを括ったペニスを見せ付ける。
目を背けるのを許さず突き上げれば、ピジョンが甘い声をだす。
汗と涙と洟水に汚れた顔で泣きじゃくるピジョンの股間を捏ね回し、亡霊が口角を上げる。
「ビンビンに勃っとるくせに。粗相しでかして悪い子やな」
金属の薄平べったい板が、後ろから犯されるリズムと同期して亀頭で弾む。
「チャリチャリゆーとるん聞こえるか、えっろい眺め」
「感じてなんかない、ッは、ぁっあ、嘘だ」
「ならなんで音すんねん、ガツガツケツ掘られて大きゅうなっとんちゃうか、めちゃくちゃ突っ込まれておっ勃ってもて救えん変態やな」
チャリ、チャリ。
否定すれどもタグが鳴る。
貪欲な唇さながら、グロテスクに開いては閉じを繰り返す鈴口にとぷりと雫が膨らむ。
「感じてなッ、ァっあ、違、ッあっあ、こンなッ、嘘だ、痛くされッ、て、勃って、変態じゃないか、ちがっ、ぁックスリ、っで」
チャリ、チャリ。
「はは、チンコは頷いとんで」
「ぁあッ、そこッ、はぁあっ」
亡霊が後ろから手を出してペニスを掴み、鎖を巻き込んで捏ね回す。一番感じる裏筋の粘膜にプツプツと玉があたり、一粒一粒沈み、出口を失った射精欲がぞくぞく駆け抜ける。
鈴口から根元にかけとぷとぷカウパーの濁流が伝い、弾む板と粘膜を巻き返す鎖が擦れ合い、先端に血が集まっていく。
俺のタグ。
スワローのタグ。
ちぎれた鎖。
早く接がなきゃ。
「あッ、あッあッァろっ、すァろぉ」
謝んないと。
鼓動に合わせてずくずく脈打ち、ぱくぱく鈴口が開閉する亀頭の膨らみを、カリ首の一段下の溝に巻かれた鎖が、卑猥この上ない形状に括り出す。
強調された亀頭に恥辱が燃え立ち、真っ赤に染まった双眸が純粋な苦痛と倒錯した快楽に歪む。
「おねが、見る、な」
宙吊りのタグが先端を引っ張り、拉ぐ。
角からぱたぱたと雫が滴る。
膨張する海綿体と毛細血管を鎖が圧する激痛が、簡単に意識を飛ばしてくれない。
痛い。気持ちいい。ずぶずぶと細胞が溶け、ぐずぐずと煮詰まり、痛みが快楽に置き換わる。
「ッあ、ふぅうっ」
責め苛まれるペニスの激痛、射精を禁じられたもどかしさを埋め合わせるように、腰を揺すって何度も小刻みにイく。
「っふ、きく……中超熱い」
ドライオーガズムの余韻でペニスを食い締める尻に、前にも増して激しく打ち込む。
締め手は気まぐれに鎖の圧を調整し、指の腹で玉を転がして粘膜を責める。延々続くペニス吊りの拷問。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッあぁあっ」
しとどに濡れそぼる鈴口に小粒の玉がツプリとめりこみ、栓をされた尿道がじれったい熱感に疼く。
「前、とって、ぁッあ」
「ま~たでかくなった。ケツもうまそうに食い縛っとる、前くぱくぱで気持ちよさそやな」
ピジョンの意志を裏切りペニスは被虐の興奮に勃起、尻を貫かれグチャグチャかきまぜられる程に硬度と太さを増していく。
「ンっあ、ぁッあッふぁ、奥苦っし、ぁぐ、前痛っ、せめて緩め、ろ、ちぎれる」
咽喉を仰け反らせ、自然と腰を振り、大きな声で喘ぐ。
全身がドロドロのグチャグチャで気持ちいい何も考えられない理性が蒸発、暗闇が凄まじい勢いで前立腺を突く、されど射精に至れず体内が不規則に痙攣する。
「ふぁあっ、ドライっ、ィくっ」
「ええで、イッてまえ」
膨れ上がる鼓動に比例し、一際強く深く前立腺を突かれた瞬間、恥骨の奥で渦巻く快感が全身へと広がっていく。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッあァあ」
瞼の裏で閃光が炸裂、衝撃が駆け抜ける。
ピジョンがオーガズムに達しても暗闇はまだ抜かず自分が果てるまで抽送を続ける、際限なく犯し続ける。
「あっ、ふぁっ、ぁァんッ、ァっふぁァ」
暗闇がピジョンの双丘に腰を叩き付けるたび、ドッグタグが気忙しく鳴る。
「ぁっ、痛ッ、はずせ、ぁァっ!」
タグが錘となって鎖の食い込み度合いがさらに強まり、開閉する鈴口から透明なカウパーが糸を引く。
「あッあぁあっ、ンあァッふぁ、ぁッァっあ――――――!!」
一回り膨らむごと鎖の締め付けはキツく、音は大きく響く。
スワロー。
母さん。
先生。
みんな。
だれか。
「!っ、めちゃ締まる。連続でイッとんで、ド淫乱やな」
「鬱血してめちゃ痛そ」
「ドМなんやろ、ギチギチに食い込んどる」
「前、はずせ、ィきたい」
気持ちいい。気持ち悪い。痛いのがいい。どうなってんだろ俺の身体。
尻と腰を高速で打ち合わす、中を抉る衝撃が前に伝ってタグが跳ねる、前立腺をピストンされるごと爆ぜる快感が鈴口にあぶくを生む。
後ろで金属音がして手錠が解除、その場に崩れ落ちる。
抵抗の余力は尽きた。
前後不覚で二足歩行も困難だ。
震える手でぬる付くペニスを持ち、どうにか鎖をほどこうとするが、あせればあせるほど指が滑って上手くいかない。
「ンあっ、ぁあっ、ふッあん」
イきたい。気持ちいい。もっと欲しい。
「前グチュグチュ、もっとして、ぁっあ気持ちいい、すご」
鎖が巻き付き、赤黒く張り詰めたペニスを両手でしごきたてる。手の甲を踏みにじる激痛。亡霊が立っていた。
「スアロ、ぁっ、すご、もっとギュッてして、俺のこといじめて」
気持ちいい。痛い。気持ちいい。裂けたアナルから白濁が吹き零れて内腿を汚す。
「ふぁっ、あふ」
片手で乳首を抓り、片手でペニスをいじめ倒す。
鎖の締め付けがスワローを思い出させて、体中が切なく疼く。
「すあろっ、ぁあ足りない、まだ全然」
尻をねだるように突き上げ、膝で這って亡霊に接近。絶え間なく股間をしごきながら、潤んだ上目遣いでせがむ。
淫蕩すぎる痴態に双子が生唾を飲む。
空気が粘りけを増したのも知らず、ピジョンは亡霊に縋り付く。
スワローがいる。俺を見ている。身体が熱くなる。さわってほしい、突っ込んでほしい、めちゃくちゃにしてほしい。
その前に言わなきゃ。
伝えなきゃ。
亡霊の膝を両手で掴み、食い下がる。
「名前、間違えてごめん」
ストレイスワローなんて呼んで。お前のこと、ひとりぽっちにして。ずっと一緒だって約束したのに。
「やきもち焼いてただけなんだ……」
深々と俯き、消え入りそうな本音を吐露する。
ズボンを掴む手が震える。見上げたスワローの顔が歪んでぼやけ、別人へとすり替わる。いやだ行くなスワローおいてかないで一人にしないでお前のためならなんでもする俺のこと穴にしていい
ノイズが乱す残像を繋ぎ止めようと全裸で媚びを売る、スワローの右手をとって一本一本なめはじめる。
「あむ、あは」
指に舌を絡ませ根元まで丹念にしゃぶり、自分の誠意を表明する。
「ふ……んむ、ふッ」
ピジョンは預かり知らぬことだが、刀の柄を握る亡霊のてのひらとナイフを得物にするスワローのてのひらの形状は、筋肉の付き方や質感がとてもよく似ていた。
目鼻立ちが二重三重にブレたスワローが慈悲深く微笑み、跪いたピジョンの頭をなでまわす。
「ええで、気にすな」
許されて不安が氷解。ピンクゴールドの前髪の奥、恍惚と濡れた瞳が淡く微笑む。
次の瞬間、無防備な口にペニスがねじこまれる。スワローがピジョンの髪を掴み、咥えさせたのだ。後ろから伸びた手が凌辱を再開、首をねじればスワローがいた。前にも後ろにもスワローがいる、大好きな弟に挟み撃ちされている。
「ふぁ、んく、はぁ」
ピジョンはとても幸せだった。
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