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「あんた、どういう魔法をかけたのよっ?」
「『ゲジゲジよ、私の元へおいで~』だよ」
「だから学校中のゲジゲジがみんな集まったんだよ。そこは『主人よ戻っておいで~』でしょっ」
「あ、そっかあ。テヘッ」
魔法熟女はげんこつで自分の頭をコンと叩き、テヘッと舌を出した。やだ、やっぱり可愛い。
モゾモゾと蠢くゲジゲジたち。この中に先生が居るのね。でも区別がつかない。
「あ!あなた、ここに居たのね」
区別がつくの?!さすが夫婦、ね?
魔法熟女は愛おしそうに一匹のゲジゲジに手を伸ばしかけたがすぐに引っ込めた。
「やだ、気持ち悪い。あんた、ここまで何の役にも立ってないから掴まえて!」
えー、仕方ないなあ。ゲジゲジが益虫って知ってるから平気だけどね。
あたしは噛まれないように注意しながらゲジゲジ…先生を掴まえた。
「で、どーすんの?」
「こうよ!」
そう言うと魔法熟女は魔法ステッキをくるくると振って床に魔法陣を描いた!相変わらず下手くそだ。
「さあ、魔法陣の真ん中にゲジゲ…主人を置いて!」
大丈夫なのかなぁ、手足が30本ある先生が現れたら嫌だよ。
「見ちゃダメ」
魔法熟女はあたしの目を塞いだ。え?え?一番見たいとこなのにーっ。
プシューという音がして先生の声がした。
「馬鹿っぽいと言って、誠に申し訳ございませんでした」
そこには服が埃まみれの先生が立っていた。きっとゲジゲジになってる間に埃が体に着きまくったんだ。
「わかればよろしい!さあ帰りましょう」
あたしたちは2階の廊下の窓を開け、雨樋をうんしょよいしょと下りた。
翌朝、校内放送が流れた。
「職員室前廊下の魔法陣の落書きに心当たりのある者は職員室まで来なさい。繰り返す…」
やっぱり魔法陣消えてないんだあ。
ーーつづくーー
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