デイサービスの佐藤さん

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送迎担当となった日。 夕方、利用者さんたちを施設から近い順に送っていく。 1人、2人… 最後は佐藤さん。 施設のある場所は片田舎といえど、比較的町の中心部にあり、お店や住宅もぽつぽつとある。 そこから、山道へ入るにつれ、お店はなくなり、住宅の間隔は空いていく。 道路の舗装もいつの間にかなくなり、外灯もなくなってくる。 佐藤さんを送迎する時は、常に他の送迎車よりも早めに出る。 うちの施設利用者の中で一番遠い佐藤さんのお宅は、山の中にあった。 道は木で覆われ、幅はワゴン車が通るのがやっと。 他の車とすれ違うことや、Uターンをすることはムリそう。 何でこんな辺境の地に住む老人の施設利用を許可したのか…。 送迎のたびに、担当者に恨み言を言いたくなる。 とりあえず、事故のないように安全運転で進む。 何も起こらないことを祈りながら運転していると、ようやく佐藤さんのお宅についた。 佐藤さんのお宅は、広い庭に立派なお屋敷。 お屋敷は西洋風。 佐藤さんのカルテによると、確か奥様と二人暮らし。 老々介護で、奥様の負担を軽減するためとご本人のための利用目的。 ついつい立派なお屋敷に見とれてしまっていると、佐藤さんが座席から声をかけてきた。 「まやちゃーん。車からおりるぞお」 「あ、はいはい。今行きます」 車から杖をついてヨタヨタと降りる佐藤さんの脇を支える。 玄関では、小柄な佐藤さんの奥様が待っていた。 猫のような釣り目に、うしろでまとめたひっつめ髪。 エプロンを付けた奥様はわたしと歩行介助を交代した。 「おかえりなさいませ。 職員さんも、いつもご苦労様です。」 「はい、ご利用ありがとうございました。 今日も楽しく過ごされていましたよ。 お荷物と連絡帳、こちらに置かせていただきますね」 そう声をかけ、佐藤さんの荷物と連絡帳を玄関脇に置かせていただく。 「では、わたしはこれで失礼します」 ペコリとお辞儀をし、玄関を閉める。 閉まる玄関の向こうでは、奥様も頭を下げていた。
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