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「うむ。ただで家に住まうわけにはいかんからの。満月になるまで待っておったのじゃ。まん丸のほうが好ましいじゃろうと思っての。わしからの礼じゃ、受け取れ」
こんなすてきなプレゼントは初めてでした。だってお月さまなのですから! しかし立夏には懸念するべきことがありました。どうしたってこれは、もらうわけにはいかないと思いました。なにせお月さまでなのですから……。
「……でも明日からはどうなるの? 明日からお月さまはなくなっちゃうってこと? それはいけないよ。だってお月さまは誰のものでもないんだから。みんなのものなんだから」
ブルーニーは、さも感心したように立夏を見つめました。
「お前は変なことを気にするんじゃの。お月さまがなくったってべつにかまいやせんじゃろう? まあ別になくなることはないんじゃから余計な心配じゃ。お月さまは使い捨てでな、また明日になれば新しいのが昇ってくるからの」
「……ほんとう? それなら、もらってしまってもいいのかな?」
立夏は期待に胸を膨らませました。
「よいんじゃ。バッチにするのがよかろう」
フフッ
立夏は笑い出しました。
「フフフッ、ありがとうブルーニー。一生の宝物だよ!」
「立夏は大袈裟じゃ、たかがお月さまの一個きりで」
ブルーニーはあきれた顔をして、立夏のことを見ていました。
お月さまを「たかが」なんていってしまうブルーニーを、立夏はますます愉快に思い、笑いはやみませんでした。
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