2 提案と頼みごと

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 やがてブルーニーは姿を見せました。  ブルーニーは月の明かりに照らし出され、昼間見たときより尊大に見えました。小さなマントもこっけいなんてことはなく、夜風にたなびき、ちゃんと似合って見えました。  しわがれた低い声でブルーニーは話し出します。 「おまえは昼間の子どもじゃな。なるほどわしらのことをちっとはわかっているようじゃの。確かにわしらは本当なら人間の家に隠れて住まう者じゃからな」  立夏は嬉しくなりました。 「うん、本にもそう書いてある。で、どうだろう? ぼくの申し出は?」  立夏は目を輝かせながらたずねます。 「……うむ、良いだろう。おまえの家に住まうとしよう。しかしわしらは本来、人の前に姿を見せるものではない。騒がしくされるのはかなわんからの。じゃからおまえもわしのことを拝聴してはならない。わかるの?」 「ふいちょうってなに?」 「他の人に話してしまうことじゃ」  立夏は少しがっかりしました。今すぐにでもお父さんやお母さん、妹にブルーニーが本当にいることを話したいと思っていたからです。でもがっかりしたのは少しです。あくまでも立夏の関心はブルーニーそのものであったからです。 「うん、わかった。きみのまわりをさわがしくすることはないようにする。これでいいかい?」 「うむ、良いじゃろう。では」  ブルーニーはぴょんと飛び跳ねると立夏の隣に立ちました。  公園の地べたに、二人の影が、色濃く落ちていました。  そういえば、お母さんに頼まれた買物がまだでした。  立夏はふいに思いついてブルーニーにいいました。 「きみは家の掃除とか手伝いをするんだったよね?」 「その通りじゃが」 「……ぼくは今お母さんの頼まれごとで醤油を買いに行くんだけど、そういうのきみに頼んでいいのかな?」  こういったものの、立夏は醤油を買ってきてほしいのではありません。いったいどうやって醤油を買ってくるのか(こんな姿のままでなのか、でなければ人に化けるとかをするのか)に興味があったのです。  ブルーニーは、垂れ下がった瞳を立夏に向け、いいました。 「いや、それはだめじゃ。わしらは家の手伝いをするんじゃ。けして人間の手伝いをするのではないからの」 「どんなに頼んでも?」  食い下がる立夏に、ブルーニーは少し面倒なようにいいました。 「おまえには姿をさらしているわけじゃし、そこまで頼めばやってやらんこともないが、醤油の買物がそこまでの頼み事とは思えないがの」  なるほどその通りだと思い、立夏は自分で醤油を買いにいきました。
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