ベストアンサー

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そのまた次の日、祐里がゼミのミーティングで教室を訪れると、既に誰かが来ているようで話し声が漏れていた。 「お疲れー…ってあれ?」 見ると泣いている鈴香を同じゼミ生の西滝奈織(にしたきなお)が慰めていた。 「な、何かあったの?」 祐里が声をかけた瞬間、鈴香は教室を飛び出してしまった。無視もいいところだと、祐里は鈴香に苛ついた。すぐにでも鈴香に一言抗議をしたかったのだが、奈織にそれは止められてしまった。奈織とは離れた席に座ったが、気にならないわけではない。他のゼミ生たちも続々教室に入ってきたが、バイトだと思っているのか鈴香がいないことをとりわけ気にする者もおらず、ミーティングが始まった。 ミーティングでは就活相談の案内が配られていたが、内容はほぼ頭に入ってこない。ふと祐里の横目に、奈織が鈴香の分の配布物を鞄に入れているのが映ったのでおそらくこれから鈴香の家にでも持っていくのだろう。そのままスルーしても良かったが、図らずとも目撃者になってしまったわけだ。自分が来るまでに何が起こったかを聞くくらいは問題ないだろう。祐里は意を決して奈織に近づいた。 「ねぇ奈織、鈴香さぁ…どしたの?」 「うーん…ちょっとね」 奈織は話をはぐらかして帰ろうとしていた。しかしこれではますます気になるではないか。祐里は奈織に再度、何かあったのかを尋ねた。ついてくる祐里を鬱陶しく感じ始めたか、奈織は若干渋い顔をしながら人気の無さそうな非常階段へ向かって歩き出した。 「…祐里、口堅い?」 祐里は奈織の放つオーラに負けたようにコクコクと無言で頷いた。 「実は…」 祐里は背筋が凍った。奈織が話したことは、祐里が選んだベストアンサーだったからだ。奈織が怪訝そうに祐里を見たが、迷子の森の話をしたところで信じてもらえる保証はないし、むしろ祐里が幻滅されてしまうかもしれない。今度は祐里が誤魔化す立場になってしまった。
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