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タイトル:相談です。
大学の先輩にずっと片思いしています。しかし、先輩には長くお付き合いしている彼女さんがおり、卒業したら結婚するそうなんです。本来なら祝福するべきなんですが、誰にも相談できず辛いです。諦めるべきか頑張るべきか、皆さんはどう思いますか?
祐里はあのときこんな悩みを書き込んでいた。そして、面白半分に即レスした答えをベストアンサーとしていたのだ。
「自分の気持ちは伝えるべき!このままだと後悔するのは目に見えている!好きなら奪い取れ!やっての後悔よりやらないでの後悔の方が千倍辛いから!!」
という回答だった気がする。沙苗のときはたまたまだと思っていたが、二度も続けばただの偶然で通せる自信がない。
「鈴香が部活で総スカン⁉︎」
「ああ、声が大きいよ…」
奈織は辺りを注意深く見回し、共通の友達に「絶対内緒にする」と約束して聞いた話だから言いふらさないでねと念押して事の詳細を話し始めた。
鈴香はベストアンサーのごとく、当たって砕けろの精神で件の先輩に昨日猛アプローチを始めた。今まで押し殺してきた感情が一気に爆発したのだろう。先輩は一時的なものだろうとスルーしていたが、彼女さんから妊娠を告げられ入籍することを部員全員の前で発表されたのが今日の今日でミーティングの直前…ということらしいのだ。おまけに、鈴香のやりすぎた行動は周囲も看過できなくなり、鈴香は件の先輩に呼び出されキツく叱られたという。
「う、うわ…なんかすごいね。偶然重なったって言うか」
「私も早いとこ諦めた方が良いって言ったし、こないだ鈴香も新しい出会いを探そうかなって話してたの。なのに、いきなりどうしちゃったんだろ…」
奈織は首を傾げているのに対し、祐里はひたすら目を泳がせていた。
「いや…最後の最後で後悔したくなかったんじゃない?」
祐里の返事に奈織は釈然としていない様子だったが「鈴香の気持ちは本人にしかわからないだろう」という結論に落ち着いた。学生寮で暮らしている奈織は、一度寮で荷物を整理してから鈴香の家に行くと言い、祐里も成り行きでついていくことにした。
(にしても…たった1日でそんな状況変わる?)
祐里は奈織に見られないように迷子の森を立ち上げた。ホーム画面のメルヘンな少女が、少しだけ薄笑いを浮かべたような気がした。
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