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奇妙な同居生活3
またお盆に。そういい、あっさりと改札を潜った俊樹の後ろ姿を見えなくなるまで見送ると、武史は再び家に帰った。
家に帰ると、千尋が洗濯を干しているところだった。
「悪いな」
「こちらこそ、俊樹を送ってくれてありがとう」
武史が外出している間にインターネットの回線も無事終わったようだ。
「明日から私も仕事開始する予定」
「まだ疲れあるやろうから、無理せんようにな」
千尋に声をかけると、武史はシャワーで魚の臭いを洗い流す。居間に向かうと千尋が武史の分と自分の分のお茶を持ってきた。
(ばあちゃんそっくりだな)
俊樹が言っていた家事は祖母仕込みというのは本当なのだろう。行動が武史の祖母とそっくりだった。離れていても姉妹は似るものなんだと変に関心をする。
チラリと正面に座る千尋を見る。俊樹のセリフで武史は初恋が千尋だったことを鮮明に思い出していた。
(トシがあんなこというから、変に意識してしまうな)
そういう目で千尋を見ると、外見は親戚じゃなければ口説いているくらい好みのタイプだった。
「美味しくなかった?」
黙り込んだ武史に心配そうな顔で尋ねる千尋に首を振り、先程自分が感じたことを伝える。
「うちのばあちゃんも、俺が風呂から上がるとこうしてお茶を持って来とったんや」
「へぇ。離れていても姉妹って似るんだね」
武史と同じような感想をいい、千尋は改まった表情で武志に伝える。
「これからお世話になります。家事とか迷惑でなければしてもいいかな?きちんとお金もいれるから」
「迷惑なんかじゃない。昨日も夕飯作ってくれたし、今だって洗濯干してくれて。正直助かるわ。ただ、ちゃんと分担しよや」
「でも...」
「でも、じゃないわ。子どもやないし、俺も今まで一人暮らしやったからできるしな。...ただ、頼みがある」
「何?私にできること?」
武史は頷くと、少し照れ臭そうに話した。
「できれば、料理は作ってくれんか?朝、昼は適当にするから夜だけでも」
身構えていた千尋は安心したように笑い、もちろん、と頷いた。
「なんだ、そんなことならお安いご用よ。でも昨日は張り切って色々作ったけど、いつもはあんなにできないよ」
「そんなの気にせんわ。千尋の料理、旨いんや。好みの味っていうんかな、懐かしいけどばあちゃんの味とも少し違うし。これから楽しみや!」
心の底から嬉しそうに笑う武史に千尋も釣られて笑顔になった。
その顔は、幼い頃よく見ていた笑顔と一緒で思わずドキリとしてしまった。
その他の家事の分担や金銭的なことを相談する。
どうしても在宅にいる時間が長い千尋が家事を多く担う分、金銭的な負担は武史が多めに負担することで調整した。
東京での生活費と同額を渡そうと思っていた千尋は、その金額を武史に伝えたところ、絶句していた。
「その金額なら、俺なら2~3ヶ月は暮らせるわ」
そういい、その金額の1/6を家に入れるように伝える。
「少なすぎるよ!」
「いうて生活費そんなにかからんわ。物価安いし、魚なら売るほど採っとる。家も持ち家やし、固定資産税もそんなかからん。高くなるんは精々食費と光熱費くらいや。あとは千尋が車いるかどうかやな」
どうする?と尋ねるが、田舎で暮らしたことがない千尋にはいるかどうか検討もつかない。
「ま、1回1台でやってみるか。俺も9時5時の仕事やないから、スーパーくらいなら毎日でも連れていけるしな」
「それならタケちゃんの負担大きいからもっと入れる」
「いいって。しばらく生活してみて、足りんかったら言うわ」
そう言って武史は立ち上がった。
「とりあえず日がある内に出掛けようや。足らんもんとかあるやろ?」
何か話したそうにしていたが、それ以上武史は聞く耳を持たないことを察したのか渋々着替えてくる、と言い残し離れに向かう千尋を見送る。
伸びをすると、縁側で寝ているトラが目に入った。近づいていき、横で一服する。
鬱陶しいそうに武史を睨みつけたトラだが眠気の方が勝ったのか、再び大人しく丸まった。
指先で毛を撫でながら、ため息混じりに煙を吐いた。
「同居の期限決めればよかったなぁ。それとも…」
そこで武史は言葉を切った。1つの可能性に気付いたからだ。あまりにもぶっ飛んだ考えてだが、敏子の性格を考えるとあり得ないことではない。
「…なし崩しに一緒にさせる気か?」
イヤな想像が頭をよぎる。その考えを振り払うように、千尋が来るまでトラを撫で続けた。
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