<2>秘めた思い

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<2>秘めた思い

春平は大一のことが好きだった。 意識をしたのは高校に上がった時、 中学高校は男子校で女子に免疫がないから、いつも自分を引っ張ってくれる大一に気持ちが行ってしまったと思っていたが、高校を卒業しても大学を卒業しても大一を好きだと思う気持ちに変化はなく、女性にたいして好意を持つことがなかったため、自分は同性が好きなのだと自覚するようになった。 高校を卒業しても年に一度は必ず会おうということで毎年4月には会っていたがそれ以外にも大一と春平は一緒に食事をしたり飲むことがあった。 大一の結婚を機に年に一度の3人であるこの飲み会だけ会うことにしたのだ。 結婚当初は大一も、結婚しても変わらないからと言っていたが 春平が結婚指輪をしている大一に会うのがつらく、 「奥さんに悪いから」と言い訳をして会うことを避けてきた。 「いろいろあるんだよ」 大一はそう言うとジョッキに残った酎ハイを一気に飲み干す そのタイミングで春平が注文した生ビールが届いた 大一は同じ酎ハイを注文すると、 春平にはぬるくなるからどうぞとビールを勧めた 「いいよ、大一の酎ハイを待ってる、とりあえず乾杯しよう」 「そうだな」 「平成も終わりか、なんだかんだ言っても、これはもう腐れ縁だよな」 「たしかに、中学からだから人生の半分になると思うと、なんかすごいね」 そんな話をしているとジョッキに入った酎ハイと搾り器に半分に切られたオレンジが届けられた。 オレンジをしぼる大一の左手を見ながら三年前の事を思い出す。 何の前触れも無く大一から結婚を知らせるハガキが届いた。 結婚式という仰々しいものではなく、親しいものだけでの簡単なパーティをするということが書かれていた。 簡単なパーティといっても開業医のパーティである、十分すぎるほど豪華だった。 あの頃の進介は地方出張も多かったため、大一と春平が二人で会うことが多くなっていた。 大一の仕事に支障がない程度に二人で飲みに行ったり、春平の休憩時間に合わせてランチを食べることもあったが、結婚どころか、付き合っている人がいるという話も聞かなかった。 春平は、ずっとこの関係が続くと思っていたし、大一に気持ちが届かなくても、一番の親友でいられればそれでもいいと思っていたところにいきなりの結婚で親友として裏切られた気持ちと、自分の気持ちは一生報われることの無い事だと思い知らされた。
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