夢に墜ちる。

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「すごいよねぇ、斉藤先輩って。東京の美大に行くんでしょ? さすが美術部エース」 「漫画家志望なんだって! でも美大で勉強して本格派目指すって! マジ意識高い!」 「ねー!」  そんな声がいつも斉藤先輩の周りはまとわりついていた。  けだるげなげな長く伸びっぱなしな一つしばりの黒髪。儚げなのか眠そうなのかわからない瞳に猫背気味の彼が、あたしは大好きだった。  斉藤先輩が、あたしの憧れだった。彼に褒められたくて頑張って作品を作った。斉藤先輩の足あとを追いかけて、同じ方向を常に目指した。
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