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「斉藤先輩?」
「じゃ。またね早坂」
「ちょ、斉藤先輩!? まってくださいよぉ……! 斉藤先輩っ!」
立ち去るあたしが斉藤先輩を止めようとすると。
見知らぬ誰かがあたしの方を引っ張り、足を止めさせた。
「やめといてやれよ」
「誰です!?」
いかにもクラブで踊りなれてそうな垢抜けた派手な青年だった。横には巨乳の同じ派手な女の子を連れていて、お酒の匂いを漂わせている。その匂いによって、軽く目眩がする。揺れ動く視界に反射的にしゃがみ込むあたし。
「何でですか?」
「残酷すぎるよ、あんた。斉藤に」
「は? なんでですか」
青年は苦い顔をして笑った。
「あれ、知らねぇの?」
「?」
そして、青年は言った。
「……あいつ、とっくに美大辞めてるよ。課題が出せなくて留年して、そのまんまやめたんだよ」
あたしは言葉を失った。
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