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「ありえない……!」
クラブから帰宅したあたしは一人、部屋で枕に顔を押し当てて擦れるような声でつぶやく。
夢だと思った。斉藤先輩はあたしにとっての希望で、憧れで、天才で。
そんな彼が、美大を辞めて酒に溺れたニートになっていた。
嘘だと思った。ショックだった。信じたくなかった。
……そして気づいた。あたしは、斉藤先輩に夢を見て、夢を押しつけていたことに。本当の等身大の彼を見ないまま、あたしの願望の詰まった、妄想の中の彼を、求めていたという事実に――。
そしてその日、斉藤先輩は。
……自ら死のうとして、病院に担ぎ込まれた。
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