夢に墜ちる。

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* 「ここが東京……魔境……」  石川から改めて上京したあたしのはじめの言葉は、これだった。  そりゃね。原宿とか渋谷に遊びに行ったことがないわけではなかったけれど。面接だって何度も通ったけど。社会人としてたった東京はごちゃごちゃして、不安にまみれた町に思えた。  あたしは、この東京でやっていけるのだろうか。漫画家になることができるのだろうか。小さな頃からの、大きな夢。絶対に叶えたい未来。時間は作れるだろうか。友達はできるだろうか。そして斉藤先輩は今、どうしてるのだろうか。  ふとスマホの斉藤先輩の連絡先にメッセージを送る。最近既読にすらならない、斉藤先輩は元気だろうか。 「東京でこれから働くので、今度あいませんか? ……と」
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