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番外編〜夏の陽だまり〜
花音ちゃんとすみれちゃんに出会ったのは、高校に入学してすぐの頃だった。
「初めまして、天沢花音です。せっかく席が前後になったんだし、良かったら仲良くしてね」
入学式で新入生代表として前に出ていた……つまり受験の点数が学年トップだった子に話しかけられてしまって緊張したのを覚えている。
「えぇっと……うん」
慌ててしまってそんな言葉しか出て来なかった。
「入学式、緊張したよねー。もしかしてまだ緊張解けてない?」
花音ちゃんはそんな私を見て優しく笑う。
「あの……私、天沢さんみたいに頭良くないよ」
「どうしたの急に? なんの話……あっ、もしかして私に話しかけられるの嫌だった?」
「ちがっ、そうじゃなくて……天沢さん、新入生代表だったから……」
「そんなの関係ないって。入学式で隣の椅子座ってて、仲良くなりたいなって思ったから声掛けちゃったの。あと花音でいいよ」
「うん……花音、ちゃん」
「はーい?」
「ありがとう、よろしくね。あっ私、伊勢日葵」
「日葵ちゃんかー、可愛い名前だね」
花音ちゃんがふっと笑うと、さらさらした綺麗な黒髪が可憐な花の香りと一緒にふわりと揺れた。
頭も良くて優しくて……正に理想の女の子。
それから花音ちゃんの左隣の席だった神城すみれちゃんとも仲良くなって、私たちは3人でいることが多くなった。
しっかり者で優等生な花音ちゃんと、クールで物怖じしないすみれちゃん、そして子供っぽくて優柔不断な私。性格も出身中学もバラバラだけど、3人でいるのはなぜかとても心地よかった。
すみれちゃんはクールでかっこいい子だけど、優しくて話しやすい。
花音ちゃんも優しくて可愛いし、たくさんお話したいのに……。
私はいつになっても、花音ちゃんと話すのに緊張していた。
だけど花音ちゃんに対する感情の正体に気づくのに、そう時間はかからなかった。
「日葵……花音のこと好きなんだね」
いつだったかすみれちゃんと私の2人きりになったタイミングですみれちゃんにそう言われて、心のパズルのピースが綺麗にはまったように、自分でも納得してしまった。
私は花音ちゃんに……女の子に、恋をしてしまったのだ。
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