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朝の華
ーーピピッ、ピピッ……
午前7時30分、いつも通りにうるさく鳴り響くスマホのアラームを止める。
もう朝。昨日も夜遅くまで遊び歩いていたせいで、睡眠時間は数時間程度しか取れていなかった。
このまま二度寝をして学校を休むことも遅刻することもできるけど、新学期の最初の日くらいは遅刻せずに行ってもいいだろう。
あたしは大きくあくびをしながら、やっとの思いで何とか布団から出る。
「おはよー」
そう言いながら立て付けの悪いドアを開けるけれど、その向こうには誰もいなかった。
……いつものことだ。
あたしが小学校に上がる前に親が離婚し、それからはママと2人でこの狭いボロアパートに暮らしている。
ママは朝早くから仕事に行って、あたしは帰ってくるのが遅いので、会話どころか顔を合わせることもあまりない。
だけどそのおかげで生活に困った記憶もないし、あたしは今日から無事、3年目の高校生活をスタートさせることができる。
それで十分だった。
ママと一緒なら、どんなことも乗り越えられる気がする。
ふとテーブルの上に視線をやると、おにぎりが1つラップに包まれて置いてあった。
近づくとメモ用紙にママの字で『ルカへ 起きたら食べてね』と走り書きしてある。
「ママ……」
なんだか温かい気持ちになって、つい顔がほころんでしまう。
おにぎりを持つともう冷めていて、ラップを通して温度を感じることは出来なかった。かなり前に作られたのだろう。
椅子に座ってラップを剥がし、おにぎりをかじる。
中身は鮭で、ご飯の硬さも塩加減も海苔も、いつもの食べ慣れた味だった。
「……ごちそうさま」
朝食用のおにぎりを食べ終えるとダラダラと学校へ行く準備を始める。
顔を洗い、歯を磨いて、メイクを施す。ブラウスはボタンを上2つ開けて、スカートを3回ほど折り、腰の高さにベルトで留める。
最後に髪をいつものハーフアップにまとめ、毛先と前髪をゆるく巻けば、準備完了だ。
「いってきます」
誰に言うでもなく部屋に声をなげかけて家を出る。
今から行けば学校にはギリギリ間に合うだろう。
私はやはりダラダラと歩き始めた。
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