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昨日、陸が来た時に外を見たら、陸の足あとがなかったわ。」
どんどんどんどん
「おーい、誰か、いるか? 入るぞ!」
「はい。」香がドアを開ける。
そこには屈強な男性数人が立っていた。救助隊だ。
「陸っていう子が、女の子二人がここに避難しているから助けに行ってくれって。
すぐに彼は見えなくなったが、どこに行ったのだろう?」
「陸を、陸を探してください。陸を・・・。」
救助隊の男性に掴みかかる鈴音。
陸は、山小屋から五百メートル離れたところで、全身が雪に埋まっているところを発見され、死亡が確認された。
死亡推定時刻は、昨日の夕方、鈴音たちの前に姿を見せるよりも前だった。
鈴音と香と陸と歩は、ホテルの一室で、明日のスキーの予定を話し合っていた。鈴音と香が、管理区域外を滑ると言い出した時に、
陸が、いきなり、そんな物語を語りだした。
そして、ちょうど、ここまで話した時のことだった。
「ちょっと、なんで、私が猪突猛進の猪みたいになっているのよ。」香が叫ぶ。
「自分ばっかり、いい人になってんじゃねーよ。」歩が立ち上がる。
そんな中、
「ごめんなさい。わかったから、管理区域外には出ないわ。
明日は朝から夜までみんなで滑りましょ。」
鈴音が泣きながら陸に謝る。
香と歩が、陸の勝手な作り話に怒っている中、鈴音だけは、まるで本当に陸が死んでしまったかのように泣き続けた。
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