白銀に襲われて

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白銀に襲われて

 見渡す限りの銀世界。山の斜面を見上げると山頂まで続く雪。斜面の隅の方でリフトが人を乗せて動いていた。  リフトは、誰も乗せていない椅子もあり、それほど混んではいない。大学を休んで平日にやってきた甲斐はあった。 「(かおり)、いい雪が積もってるね。天気も良くて視界良好!」  鈴音(すずね)が、香を後ろから突き飛ばす。香は、一歩前にトンと飛び、片足で着地して、残りの手足でバランスを取り転倒を免れる。  体勢を立て直した雪山香(ゆきやまかおり)は、笑顔で白雪鈴音(しらゆきすずね)に近づく。 「鈴音、今日はいっぱい楽しめるね。」  香が、鈴音の左から右方向に力いっぱい突き飛ばす。鈴音もひょいと片足で着地すると残りの手足でバランスを取る。 「やめてよ。香、今のは怖かったわ。」  鈴音は、言葉とは逆に涼しい顔をしていた。  白雪鈴音と雪山香は、スキーの国体強化選手で、スキー競技には欠かせない並外れたバランス感覚と、強い脚力の持ち主だった。  今日は、お互いの彼氏とダブルデートで楽しくスキーをと、お互いの彼氏を誘ったのだ。 「鈴音、俺たちには、そんなことやめろよ。マジで倒れるし、マジで怪我するから。」
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