23人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
白銀に襲われて
見渡す限りの銀世界。山の斜面を見上げると山頂まで続く雪。斜面の隅の方でリフトが人を乗せて動いていた。
リフトは、誰も乗せていない椅子もあり、それほど混んではいない。大学を休んで平日にやってきた甲斐はあった。
「香、いい雪が積もってるね。天気も良くて視界良好!」
鈴音が、香を後ろから突き飛ばす。香は、一歩前にトンと飛び、片足で着地して、残りの手足でバランスを取り転倒を免れる。
体勢を立て直した雪山香は、笑顔で白雪鈴音に近づく。
「鈴音、今日はいっぱい楽しめるね。」
香が、鈴音の左から右方向に力いっぱい突き飛ばす。鈴音もひょいと片足で着地すると残りの手足でバランスを取る。
「やめてよ。香、今のは怖かったわ。」
鈴音は、言葉とは逆に涼しい顔をしていた。
白雪鈴音と雪山香は、スキーの国体強化選手で、スキー競技には欠かせない並外れたバランス感覚と、強い脚力の持ち主だった。
今日は、お互いの彼氏とダブルデートで楽しくスキーをと、お互いの彼氏を誘ったのだ。
「鈴音、俺たちには、そんなことやめろよ。マジで倒れるし、マジで怪我するから。」
最初のコメントを投稿しよう!