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リフトから降り、山頂付近に立ち、鈴音と香は、すすーっと管理区域外を示す看板の前まで来て、ロープを乗り越える。
そこは、深雪の世界。山の斜面には自然の木が立ち並び、雪は無数の凸凹になっている。
「行くよ!鈴音!」
綺麗なフォームで滑り出す香に遅れまいと鈴音も雪を蹴って滑り出す。
山の斜面は急で、グングンスピードが増していく。
香の前方の木の枝に積もっていた雪が、ドタドタと落ちる。風が強くなっていて、霧状に雪が舞う。
「香、避けて!」
香は、右側に避けて、滑走を続けている。しかし、さらに右側へと斜面になっているため、当初の予定のコースからどんどん離れていっている。
鈴音は、膝を曲げ体を丸め、直滑降で、香を追い抜き、香に止まるように指示を出す。
「だいぶ、コースから外れちゃってる。ここから、コースに戻ろう。」
「コースに戻るのめんどくさい。このまま、下山しよ、鈴音。」
「いや、でも・・・」
「行くわよ。」
仕方なく、香について滑る鈴音が、目の前が少し暗いことに気づき、空を見上げる。晴れの予報のはずが、厚い雲で覆われ始めていた。山の天気予報は、あてにならない。
「黒い雲、吹雪になるかも」
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