白銀に襲われて

6/8

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 土間の端に戸があったので開けるとそこは、トイレだった。 「鈴音、これ見て。」  香がスマホを見せてくる。圏外だった。私のは? 鈴音も自分のスマホを見る。キャリアによって電波の様子が違うので、期待してみた。  鈴音と香は、よくバックカントリーを攻める。念のため、鈴音と香は、スマホのキャリアを必ず別の会社にしている。こんな時に、よく片方のスマホは繋がるが、もう片方は繋がらないということも経験済みだ。  あらためて、自分のスマホを覗き込んだ鈴音がつぶやいた。やはりダメだった。  電気は来ていないようで電灯はない。水道もない。明かりはろうそく、暖房は暖炉のようだが、マッチもライターもない。  準備していた食料を食べ、明日の救助を待つことにする。  夜になるにつれ、体が芯まで冷えてくる。  今まで、がたがた音がしていた窓やドアも静かになった。  どうやら吹雪はやんだようだ。吹雪はやんだとはいえ、外は真っ暗。明日の朝までここにいるという方針に変わりはない。  二人は寄り添って震えていた。  どんどん  不意にドアを叩く音に気づく。こんな夜中に救助隊?   香がゆっくりドアを開ける。 「陸! 」  陸の姿を見て、鈴音が足を引きずりながら駆け寄り抱きつく。 「陸、会いたかった。ごめんね。心配かけた? 」  抱きついた鈴音は、陸の肩を手で掴み、手を伸ばすと、自然と体同士が離れる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加