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土間の端に戸があったので開けるとそこは、トイレだった。
「鈴音、これ見て。」
香がスマホを見せてくる。圏外だった。私のは? 鈴音も自分のスマホを見る。キャリアによって電波の様子が違うので、期待してみた。
鈴音と香は、よくバックカントリーを攻める。念のため、鈴音と香は、スマホのキャリアを必ず別の会社にしている。こんな時に、よく片方のスマホは繋がるが、もう片方は繋がらないということも経験済みだ。
あらためて、自分のスマホを覗き込んだ鈴音がつぶやいた。やはりダメだった。
電気は来ていないようで電灯はない。水道もない。明かりはろうそく、暖房は暖炉のようだが、マッチもライターもない。
準備していた食料を食べ、明日の救助を待つことにする。
夜になるにつれ、体が芯まで冷えてくる。
今まで、がたがた音がしていた窓やドアも静かになった。
どうやら吹雪はやんだようだ。吹雪はやんだとはいえ、外は真っ暗。明日の朝までここにいるという方針に変わりはない。
二人は寄り添って震えていた。
どんどん
不意にドアを叩く音に気づく。こんな夜中に救助隊?
香がゆっくりドアを開ける。
「陸! 」
陸の姿を見て、鈴音が足を引きずりながら駆け寄り抱きつく。
「陸、会いたかった。ごめんね。心配かけた? 」
抱きついた鈴音は、陸の肩を手で掴み、手を伸ばすと、自然と体同士が離れる。
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