第三話 春の雪①

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 それ以外の服装はコートやベルトなど以外は必ず違う服装で来る。家が金持ちなのだろうか、ある程度財力が無ければ難しいだろう。髪型もファッションに合わせてアレンジする。  そして、服のセンスは好みかどうかはさておき、自分に似合うスタイルを分かっているというか、単純に良いと思う。ゲイの間ではモテるファッションという定型のスタイルがあるのだが、そこに依らない彼は珍しいタイプだった。  今日は白のカットソーにワインレッドのニットを重ね着して、タイトな黒のパンツに黒のレザーシューズ、黒のMA-1ジャケットを羽織っている。髪型は少しルーズめに団子のようにして後ろで結んでいる。  ちなみに私はといえば、灰色のストライプのシャツに黒のジャケットとパンツ、黒のトレンチコートだ。大体それぞれの色が変わるだけでほとんどスタイルは変わらない。 「先週から何かありました?」 「いいや。相変わらず平凡な日常だ」 「そうなんですね。俺はまた姉さんから連絡がありました。仕事が順調かどうか心配らしくて」  未だに互いの仕事は何をしているのか知らないままだ。こういう場であれば、仕事どころか相手の素性などは一切知らないままでいるというのもよくあるし、今まで交際していた相手ですらあまり知らないでいた。知る必要もなく、たいして気にもならなかったからだ。  しかし、安理は割合何でも話す男だった。両親を幼い頃に立て続けに病気で亡くし、歳の離れた姉に育てられたという身の上話なども。
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