第一話 ある新年の朝

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 ブランドのロゴマークが大きく書かれたものや家族写真と共に衣装や化粧品などについて手書きで付け加えられているものがほとんどだった。 「君のお姉さんからのもあったぞ」  家族写真がプリントされた年賀状を抜き取って差し出すと、安理(あんり)は私の手の中にある写真を満面の笑みで覗き込んだ。一緒に眺めたいのだと理解する。 「レオもクロエも大きくなったなあ! もう二人同時には抱っこしてあげらんないかも!」  ドレッドヘアの黒人男性と日本人女性、そして二人に抱き寄せられている幼稚園児くらいの男の子とようやく一人で歩き始めたくらいの女の子が写っていた。 「海外からも年賀状送れるんだな」 「そういうのやってくれるサービスがあるらしいよ。毎年恒例なんだ」  安理の姉は元々パリコレクションなどに出ていたトップモデルで、フランス人のサッカー選手である今の夫と出会い結婚したのだそうだ。  そもそも「安理」という名前は、親がサッカーが好きでフランス人選手の名前からつけたものだと言っていた。安理も安理の姉も運命的なものを感じたそうだ。  だから、義兄と会った時「君が日本のアンリか! サッカーは得意?」と聞かれて大爆笑したと言っていた。ちなみにサッカーよりもバスケットボールの方が得意だそうだ。 「あ、次の年賀状、伊涼(いすず)さんのだよ」  言われて手元を見た時、差出人の名前に一瞬固まる。が、すぐに年賀状を捲って裏返した。  幸せそうに笑顔を浮かべる男女と女性の手の中にある小さな赤ん坊の写真。手書きで「久しぶり。元気か? パパになりました笑 地元に帰ってきたら飲もうぜ」と書かれていた。
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