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眉根を寄せてまた何か言いかけた安理の頬に手を伸ばした。心が穏やかになり、自然と笑みが溢れる。
「私には君が、安理が居るから、それでいい」
彼の綺麗なブラウンの瞳が大きく見開かれる。そして顔をくしゃくしゃにして、私に抱き付いた。
「うぅ〜〜伊涼さぁん! 不意打ちずるい〜〜」
まるで身体の大きな子供のような安理に苦笑しながら頭を撫でてやる。と、頬を紅潮させた安理が私に軽く口付けて「超好き」とまた抱き付いた。
「……よし! じゃ、おせちとお雑煮準備するね!」
「ああ、ありがとう」
さっと立ち上がり、キッチンに向かう安理の背を見送る。煎茶を口に含むと、ちょうどいい熱さになっていた。
キッチンに立つ金の短髪で端正な顔の彼を見詰めながら、私は一年ほど前、背中まで髪を伸ばしていた彼と出逢った日のことを思い出していた。
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