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夕飯は原田が作ったカレーだった。美味しそうな匂いが部屋中に漂う。そんな中、龍斗は食器棚の前でしょげ返っていた。颯は龍斗の前に仁王立ちして問い詰めている。
「あの、カレー温め終わったんですけど」
「……はい」
「皿、用意しておいてって言いましたよね」
「……言われました」
「何もないんですけど」
「……すみません、やっぱり無理でした!」
龍斗は目にも止まらぬ素早さで土下座をした。颯は呆れてため息をつく。
「もう、ソファで待っててください。ま、どうせ食べられないと思うけど」
颯がわざと冷たく突き放すように言うと、龍斗は目を潤ませた。叱られた子犬のような目で見つめられると、悪いことをした気になる。でも、できると言ったのは龍斗だ。颯は負けずにじっと龍斗を見る。龍斗は肩を落とすと、とぼとぼとソファへと戻っていった。
何度目かもわからないため息をつきながら、颯は皿を二つ用意する。盛り付けをし終わって、ふと、龍斗は食べられないのではないかと気がついた。無意識で作っていた自分に驚く。
「まあ……仕方ないか」
作ってしまったものは仕方ないと、颯はカレー二皿を両手に持つと、リビングへと向かった。
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