1人が本棚に入れています
本棚に追加
龍斗がやって来て一週間が過ぎた。天気はあまり安定せず、ほぼ毎日雨が降っている。
「またカレーですか」
リビングのテーブルでカレーを食べる颯。その隣で龍斗が言った。
「あの、俺、めっちゃカレー食べたかったんだけど、食えなかったんですよ。この前も食べられなかったの、見てましたよね?」
「ああ、そういえばそうでしたね」
龍斗は口をとがらせて颯を睨んだ。ここは我慢対決だと、颯は龍斗の相手をせずにカレーを食べていく。
先に根負けしたのは龍斗だった。
「あー!」
と叫ぶと、後ろのソファに飛び乗った。
食べたい食べたいと、呪詛のように唱えている。
「ごちそうさま」
勝ち誇ったような清々しさを感じながら、颯は空になった皿を持ってキッチンへと向かった。シンクで皿を洗い始めると、ソファの上の龍斗は大人しくなった。
「あ、そうだ、龍斗。俺、稽古に行くことにしたから」
「ふうん……え、マジで!?」
「マジで」
三日くらい前から、ずっと考えていた。もうそろそろ、稽古に行くべきなのではないかと。公演の初日も近づいている。これ以上休むと、舞台には上がれないだろう。
龍斗はソファの上で嬉しさを爆発させて、足をばたつかせていた。颯はいつも通りを装って、皿を洗う。しかし、その口元はほころんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!