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ボロボロと溢れる涙を必死に拭ってみるけど、次から次へと溢れて拭うのが追い付かない。
こんなに涙が出るなんて。
こんなに陽介が好きだったんだ。
どうやって泣き止めばいいか解らない。
どうやって諦めればいいか解らない。
だって、ずっと好きだったんだよ。
だって、いつも一緒だったんだよ。
自分に勇気が持てなかったのが敗因なんだけども。どこか心の中で、全てを言わなくても伝わる事があるんじゃないかと思ってたとこもあって。
卑怯だったと思う。
幼馴染みという立場を利用して、隣に居続けたから。
きっと、ハツカノさんは勇気を振り絞ったんだと思う。
努力して必死に勇気を出して。
だから報われたんだと思うと、自分は少しも努力も勇気も出せてない事に気付いて愚かな自分に絶望する。
ハツカノさん、知ってると思うんだけど、陽介って優しいの。
優しくて思いやりがあって。それで皆に慕われて。
決して前に出過ぎず、でも引っ込んでる訳でもなくて。
ちゃんと協力して成果を出せるんだ。
そんな陽介が私の自慢だったのに、素直になれないから、いつも憎まれ口を叩いてた。
ハツカノさん、きっと知ってると思うけど、陽介ってとても優しい眼差しをしてるの。
髪も柔らかくって、声も穏やかで聞きやすくって。
背も高くて、足も速いの。
だけど、いつだって歩幅を合わせてくれる。
どんな人より、優しい。
そんな陽介が大好きなのに。
どうして陽介のハツカノは、私じゃなかったんだろう。
どうして勇気を出せなかったのだろう。
どうして安穏と日常を過ごしてたのだろう。
一瞬で壊れるなんて、何で思わなかったんだろう。
思い出せば思い出すだけ、陽介しか私の中には居ないのに。
今更手を伸ばしても、この手を取ってくれる事なんてないのに。
溢れる涙は、相変わらずボタボタと落ち、夏の制服のシャツを濡らし続ける。
誰も決して、この涙を止める事は出来ない。
止められるのは陽介だけなのに。
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