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■陽介×和奏
「よーすけ」
「ん?」
「何してんの?」
「…勉強デス」
「ふふ、聞いてた通りだ」
「誰に聞いたの」
「ウチのお母さん。陽介のお母さんから聞いたって」
「隠してた訳じゃないんだけどな…」
「んーん、それはいいの。会う時間が減る、って言い出した時は何事かと思ったけど、ちゃんと説明するって言ってくれてたし」
「うん…あの時は、すぐには言えなかったんだよな…。ちょっと恥ずかしかったから」
「なんで?」
「俺、頭良くないから、さ」
「気にしなくても大丈夫な成績じゃない」
「いやいや、和奏に比べたら」
「比べなくても…」
「和奏とさ、同じ大学に行きたいんだよ、俺は」
「え!?」
「だから、必死なの」
「でも…自分の将来に関わる事だよ、私に合わせなくていいのに…」
「和奏が言ってる事は解るんだけど、やっぱり傍に居たいんだよ。どうせ就職は別になってしまうし」
「そりゃそうだけど…傍に居たいって言ってくれるのも嬉しいけど、私のせいで陽介が学びたい範囲を狭めさせたくないよ」
「俺のエゴだから」
「もう…陽介」
「重い?」
「そんな風には思わないけど…心配しちゃうよ」
「心配しなくて、いいよ。俺がしたい事。一緒に通って学んで、その中でちゃんと自分に合ったモノを探すから」
「うん……でも、無理じゃない?」
「ん?無理?それはどういう…俺の成績が無理なくらい、ランク上な大学?」
「あ、いや…そうじゃなくて」
「どういう事?」
「…陽介、あのね、私が行こうとしている大学………女子大だよ」
「え!?!?!?!?」
「やっぱり知らなかったか…」
「教えてくれなかったじゃん!」
「聞かれなかったもん」
「うっ、そ、そうだけど…!えぇー、女子大…どこの」
「隣の県にあるの」
「ほ、ほーん…」
「でも、ちょっと悩んでて」
「どうした」
「陽介がそこまで頑張ってくれてるから」
「うん」
「私も、自分がやりたい事の、もっと違う道も考えてもいいのかな、って」
「和奏…」
「陽介が頑張ってくれてるなら、私も何かしら頑張りたい。陽介に寄り添えるように」
「無理させるんじゃないか?やりたい事なんだろ」
「でも、もっと視野を広げて、陽介と一緒に居られる選択もしてみたい」
「俺が和奏の選択を狭めてるかも知れないな…」
「陽介は優しいから、私に合わせてくれようとしてる。それは凄く嬉しい」
「だけど和奏のやりたい事を狭めていい訳じゃない」
「そんなの陽介だって一緒じゃない」
「俺は結果的にこの勉強をする事で自分の成績を底上げできるし、やりたい事へ近づく事だから」
「やりたい事?」
「大学は見聞や視野を広げて、自分の可能性をもっと知る事が出来る場所だと思うよ。だけど、その先にある就職は、やっぱり少しでも有利に挑みたい」
「うん」
「だから、勉強して自分の行ける大学の幅を広げ、就職に繋げたい」
「…うん」
「将来、和奏と結婚したいから」
「陽介…」
「今の時代、俺が養ってやる、とかは古いかも知れない。だけど、俺の子供を産んで育ててくれる間は、俺がちゃんと養ってやりたい。そうなると、就職先も選べる様にしたい」
「結婚は確定なんだね」
「は!?そこ!? え、嫌なの和奏!?俺と結婚したくない!?」
「したいよ」
「はぁ~、良かった…驚かすなよ」
「そうやって先を考えて思ってくれてる陽介に感動しちゃった」
「感動してくれたなら良かった」
「やっぱり、私ももっと考えよう。陽介と同じ大学行けるように」
「……和奏、俺のワガママでごめんな」
「ううん、大丈夫。私はそんな陽介のワガママは好き」
「和奏」
「ふふ、陽介、あったかい。エアコン効きすぎて寒かった」
「ごめん。俺で身体を温めて」
「うん」
そうやって、二人で抱き合ってお互いの体温を交わす。
その温かさに、計り知れない安らぎを感じて、求め合う。
どうかこの先も、この優しい愛しい人と、たくさんの事を共有し生きて行けますように。
今この時の幸せを、この身全部で感じながら、あまりにも嬉しくて涙が出た。
それを優しい手付きで拭ってくれた陽介の指に、愛しさを込めて唇を寄せた。
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オマケも最後までお読みくださり、ありがとうございました!
しばらくしてから、スター特典を公開したいと思いますので、また読みに来てくださると大変嬉しいです(*^^*)
ちなみに、まだ構想で書き始めてもないので本当にしばらく先になります(*>_<*)ノ
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