第1話

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第1話

「あら、いらっしゃいませ!」 僕は、はきはきした綺麗な声に迎えられた。 声の主はアルバイトの女子大生だろうか、 その少女はカウンターの中でコップを拭いていた。 「お好きな席へどうぞー」 とりあえず座るよう命じられた僕は キッチンが良く見える端のテーブルに座った。 オープンしたての店舗なのだろうか、 木目調の内装はとてもキレイで割と落ち着いた空間だった。 アルバイトの店員がメニューとグラスの水を持ってきた。 それから僕の方を見ながらメニューを 差し出してくれる。 少し微笑みながら彼女が言うことは、 「どんな卵料理でもお出しできますよ」 メニューを開くと、オムライス・オムレツが目立つように書いてあった。 それから玉子焼きから炒め物、 目玉焼きまで載っている。 和洋折衷でなんだか滑稽だった。 オムライスなら店主に作ってもらいたいし、 いたずらの心を込めて簡単にできそうなものを頼んでやろうと決めた。 「シンプルなものが食べたいなあ、 玉子トーストをください」 「かしこまりました」 彼女は自然な微笑みで答えてくれた。 ボブショートの下にある表情はまるで 高校生のように思えた。  ・・・ 僕は待つ間にいつもの様にスマートフォンを開くのではなく、キッチンの方を見ることにした。 彼女がしっかり調理できるか見ておこうと思ったからだ。 アルバイトの店員はうんと背伸びして棚からパンを取り出していて、袋から1枚抜き取ったところでこちらを見てきた。 ……あ、視線に気づいたかな。 慌ててスマートフォンを開く僕。 思い出したように質問する彼女。 「パン、焼きますか?」 ……視線に気づいたわけでは なかったようだ。  ・・・
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