Ⅰ・姫の死

1/3
前へ
/108ページ
次へ

Ⅰ・姫の死

ベロニカ・ベルベット・カマライン エール王国の第二皇女の名だ。 その皇女は今日死ぬのだ。 煌びやかに装飾された部屋に大きなベッドが真ん中に鎮座している。 部屋は人払いがされており、そこに佇むのは皇女のみ。 夕日に照らされた部屋は、部屋に散らばる金をさらに輝かせる。 一際目立つ金と宝石で装飾された鏡の縁を手でなぞる。 鏡の中には黒い髪を結い上げた少女が映る。 熟れた頬と小さな唇が黒髪に映える。 深紅のドレスが少女の肌の白さと、美しさを際立たせる。 金髪や淡い色の髪の毛が多い中で 黒い髪と瞳は皇族の証であった。 歴代の王は黒の髪と瞳を称える。 現国王もそうだ。 ここ、エール王国では この黒髪と瞳は重要な意味を持つのだ。 真っ黒な瞳は宝石のようにキラキラと輝く。 別れを告げるようにもう一度鏡を見据えた。 私は死ぬ。 決意が揺らがないよう、ぎゅっと手を握りしめる。 皇女の背中は夕日に照らされ白く淡く輝いていた。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加