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「おい。何してる」
人目のない木陰でゴソゴソと服を脱ぎ出した私を焦った様にロイが止める。
不愉快そうに、ロイの綺麗な顔が歪んだ。
「着替えるんです。見ないでください。」
ロイ睨みつけ、着替えを止めた手を振り払う。
宿に帰れば日が暮れる。
出発まで時間がない。
ロイへの借りが予想以上に増えたからには
今すぐにでも稼がないと間に合わない。
ゴソゴソとシャツの中でさっき買ってもらった服を着た。
ロイは呆れた様にため息を一つつき私に背を向けた。
「好きにしろ。」
ぶっきらぼうな物言いだが、さりげなく通行人に見えぬ様、背中で私を隠す。
広い背中と柔らかな金髪がめんどくさそうに空に視線を移す。
さりげないロイの優しさに思わず頬が緩む。
全て洋服を着終わり、シャツのボタンを外す。
煌びやかな赤い踊り子の衣装に、
身体を揺らすたび揺れる付属の装飾品。
サイズもぴったりだ。
足を出すたびにキラキラ輝く洋服にうっとりする。
手触りから分かる上質感。
これが1000ルドで買えたのはラッキーだった。
本当は化粧道具を買いメイクまでバッチリして踊りたかったがそんな暇もお金もない。
「ありがとうございます。着替え終わったのでもう大丈夫です。」
そう言ってロイの手を引っ張る。
「今日のお礼に踊りを披露しますから。」
気だるそうな瞳を逃さない様にロイの手をキツく握りしめる。
そうでもしなければ彼は宿に帰ってしまうだろう。
ダンスを披露する場所は人目の多い大通りの広場がいい。
今にも帰りそうなロイを逃さない様にもう一度ロイの手を握りしめた。
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