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ベッドに座り今日の稼ぎを数える。
味気ない宿は薄い漆喰に囲まれている。
所々剥がれている壁は宿の年季を感じさせるり
ランプが部屋を照らしていた。
机の上には畳まれた真っ赤な踊り子の衣装。
私の持ち物は今はそれだけだ。
ベッドの上にはお札とコインが散らばる。
620ルド
これだけ稼げれば上出来だ。
コツンと壁に頭を預ける。
この薄い壁の向こうにロイがいる。
隣の部屋にいるロイには感謝しかない。
ロイは買い物も付き合ってくれ、
日が暮れるまで踊り続ける私を側で見守っていてくれた。
表情は相変わらず無く腕を組んでいたが、
充分に客寄せの役割は果たしてくれた。
その上きちんと宿まで送り届け、
しかももう一つ部屋をとってくれるなんて。
殺されるどころか、今日のロイの態度を見ていると信頼できる人かもしれないという考えが過ぎる。
宿代までロイに返さなくてはいけない。
ロイの思わぬ優しさを思い出しながら、
当初のロイの姿を思い出す。
血に濡れた総指令官。表情のない瞳。
今日感じた感情を振り払う様に頭を振った。
ロイが信用できるかは分からない。
町に溢れるロイの血に濡れた噂はきっと本物だ。
彼は希代の天才ロイ・ランカスター。
今日の感情を上書きする様に、ロイに感じた恐怖を細部までもう一度思い出す。
好意をもってしまえば殺されかねない。
隙を作ってはならない。
タレイアこそが私の生きる場所。
もう一度タレイアに戻るまでは死ねない。
ロイへの気持ちを心の奥底に封印し、ゆっくりと瞳を閉じた。
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