いざ書庫へ

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 ――おやおや誇り高き姫君ともあろう方が。口ではそんなこと言っているくせに、もうここをこんなに濡らして。なんてはしたない。ああ、ぐっちゃぐちゃだ。祖国を滅ぼした男の前で足を広げてあられもない姿で。ほら、そろそろこれが欲しくてたまらなくなってきたでしょう? 「媚薬?」  思わず、声に出た。  コンスタンスは、ソファの上で抱えていたクッションを横に置いた。  絨毯にハンカチを広げ、その上に積み重ねた本の山を崩さないように背表紙を目で追って、一冊抜き取る。  ぱらぱらとページをめくって確認。媚薬。  握りこぶしを口元にあてて、しばし考え込んでしまった。 (当然のようにあっちにもこっちにも出て来るけど、媚薬ってなに? どこで手に入るものなの? 世間一般で流通しているものなのかしら。私が知らないだけ?)  父の隠し書庫にて。  官能小説を読み始めたものの、読めば読むほど「官能小説界隈の常識」にいちいちひっかかってしまう。飲んだだけで身体が熱くなってくる薬を、多くの場合男→女(※女→男もある)で盛りまくっているシチュエーションによく遭遇するが、それはそんなに気軽に摂取しても害がないものなのか。
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