表現について

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表現について

 もし媚薬が手に入った場合、飲んでも良いけど、「(さか)る」とは。  窺うコンスタンスの眼差しを跳ね除けるように、アダムはきっぱりと言った。 「実際にはそのようなもの存在しないので。というか、入手できませんので、仮定の話をしても仕方がないかと思いますが」  コンスタンスはソファに身を沈めながら、深いため息をついた。 「そうよね。あなたが乱れるところなんて想像がつかないわ。『口ではなんと言おうと、下の口は正直のようだが』とか『もっと激しいのがいいのか?』とか『良すぎて腰が止まらない』とか『くっ、もってかれそうだ』とか」 「お嬢様」  低い声で「もうその辺で」と遮られた。 「ずいぶんお詳しくなられたようで」 「じゃないと書けないでしょ? 何がどうなっているのかよくわからないけど、『ぐちょぐちょに濡れそぼって、ダラダラとはしたなく蜜をこぼした蕾」に『肉の楔』を打ち込むのでしょ? 要するに」  得たばかりの知識をすらすらと(そらん)じてはみたものの、アダムの反応はひたすら鈍い。  無表情を保ったまま、ぴくりとも動かず佇んでいる。  その態度は少し気になったものの、コンスタンスはこの機会を逃さぬよう、疑問点を続けて口にした。
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