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白金色の髪に、すみれ色の瞳。引きこもりがちなせいか肌は抜けるように白く、体つきは華奢であると自分では思うものの、胸だけは豊かに成長している。いつも目立たないように、肌の露出は少なく首元までフリルスタンドの襟があるようなドレスばかり着ていたが、それでも向けられる視線は感じていた。
見合い話がくる理由も、まあまあわかる。
(足下見ている方ばかり。ニ十歳差ならまだましくらい。中には五十歳も上の方の後妻なんていうのも)
結婚に「恋」が必要不可欠とは思ってはいないにせよ、何を望まれているか考えるとぞっとする。
「アダム、もうあなたが選べばいいと思うわ。ずっとそばで見守ってきたあなたのお嬢様が嫁ぐにふさわしいお相手を。どうせ好色な殿方にいいようにされ、無垢な花を散らされるだけの結婚よ」
アダム・エリオットは、若輩ながらも、没落した家にはおよそ不釣り合いなほどに、今もきちんと執事としての務めを果たそうとしている。お仕着せを隙なく着こなし、長い黒髪は清潔に整えて首の後ろで一本に結んでいて、ほとんど表情のない端正な顔には片眼鏡をかけている。黙っていると一流どころの舞台俳優や令息も及ばないほどの神秘的な雰囲気のある男だ。
黙っていれば。
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