執事の提案

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 忠誠心のようなものがあるとも思えないし、アダムのように優秀な人間など、真っ先にこの家を出て行くべきだったのに。どうして残っているか謎だ。 「稼ぎたいなぁ……」 「元手がいらなくて、非力なお嬢様にもなんとかなって、稼げることですか……」  うーん、と悩むようにアダムは瞼を伏せる。 (結局のところ身売り結婚でしょ)  結論なんか聞かなくてもわかっている、と拗ねた眼差しでコンスタンスはアダムを見つめていたが。 「実は、先日旦那様のお部屋に隠し倉庫があるのを見つけてしまいまして」  有能な執事が、とんでもない情報を打ち明けてきた。 「か、隠し倉庫!? まさか、債権者の目からうなるほどの金塊を隠し通していたとか!?」  色めき立って身体を起こしたコンスタンスに、いいえ、とアダムは謹厳実直そうな様子で言った。 「隠し倉庫を見つけたのはその債権者たちです。さすがプロですね」 「ああ、そう、じゃあすべて持ち去られた後ね。一応聞くけど、中には何が?」 「いえ、手つかずで残っています。資産価値無しとして」  この情報に、コンスタンスは眉をひそめて「何?」ともう一度尋ねた。  アダムは、まったくふざけている様子もなく厳かに言い放った。
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