いざ書庫へ

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いざ書庫へ

 なんの益もない父親の恥ずかしい秘密情報を、なぜアダムは娘であるコンスタンスに告げたのか。  その心は。 「お嬢様には事業を失敗して多大な借金を残した旦那様の血が流れていますが、同時にそれは官能小説を愛してやまない官能小説愛好家の血でもあるのです。そこで、私からお嬢様におすすめしたいのは官能小説の執筆です」  とんでもない血を呼び起こせと言い出した。 「アダム、あなた自分の言葉のどこに説得力を見出してるのかしら。何を言っているのかちょっとわからないんですけど」 「何しろ古今東西の官能小説がすでに手元にあるんですよ。元手がなくてもできることで、身売りもしたくなければ、もうこれを生かすしかない。幸い、官能小説の出版社なら若干の伝手はあります」 「なぜ」 「つべこべ言わずやってみてください。丸写しはだめですよ。そういうことしてもすぐにわかりますからね。ご自分で『これはエロいな~』と思える状況を想像して書くんです」  丸写しをしてもすぐにわかるとは、どういう意味なのか。  まさかすでに官能小説書庫の中身を読破してそこそこ内容を頭に入れているのか。 「そこまで言うならあなたが書けばいいのでは?」
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