いざ書庫へ

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「いえ、こう見えても私はお嬢様の与太話に付き合う暇もないほど仕事があります。貧乏暇なしですよ。お嬢様にもぜひとも働いて頂かなければ。良かったです、働く気になってくれて」  働き口を見つけてくれるということもなく、問答無用で進路を決められてしまった気がする。  コンスタンスの物言いたげな視線に気づいたアダムは、ついぞ見せたこともないほど友好的な態度で顔をほころばせた。 「嫁ぎ先は私に決めるようにと仰っていましたが。どうやらお嬢様に相応しい相手は()が見た中にはいなかったようです。相手が現れるまでの間、ただぼんやりしていても仕方ないでしょう? なのでひとまず仕事を『選ばせて』頂きました。どうぞ、資料はたくさんありますので、手始めに何冊か読んで官能小説特有の語彙に慣れるところから始めましょう」  普段から女性たちの視線を釘付けにする美貌に、甘やかな笑顔を浮かべて、官能小説をすすめてくる。 (「俺」って言った? 地が出たのかしら?)  ほんのわずか一瞬、野性的な光が目に宿ったように見えたが、気のせいかもしれない。 「たしかに、仕事は探していたし、ぼーっとしていても仕方ないわよね。早速案内してもらえるかしら」 「はい」
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