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「もう一度読んで」
蓮は頭から読み直した。
「もう一回」
また読み直す。それを4回ほど繰り返した。もうぼろぼろと涙が零れているジェイに晶子の涙も止まらない。蓮も鼻を詰まらせて、最後にはつっかえつっかえ読んだ。
「お祖母さまじゃない……」
最後には優しかった祖母だったが、やはりジェイの中では昔の祖母が深く焼き付いている。
「そうだ。おばあちゃんだよ、お前の」
蓮に抱きつく。胸に顔を押し当てた泣き声がだんだん大きくなる。蓮はひしとジェイを抱きしめた。今度は晶子も目を逸らさなかった。こんなに嬉しいことはない。
(今、この瞬間に一緒にいて良かった)
そんな思いが溢れてくる。
ある程度泣いてやっと蓮から離れる。すかさず蓮がティッシュを取った。読み始める前にティッシュの箱をそばに置いていた。
晶子の息が止まるような光景が広がる。
(鼻…… 拭いてあげるの?)
ジェイもされるままになっているということは、きっといつものことなのだ。
(もう気にしちゃだめ! そうよ、結婚したってこういうこと。夫婦なんだから当たり前! 気にしちゃだめ!)
自分に一生懸命に言い聞かす。普通の夫婦だってここまでしないのに。
「どうだ、落ち着いたか?」
「うん…… 本当におばあちゃんが俺を探してたんだね?」
「そうだよ。ずっとずっと一生懸命探してたんだ。『宮里の家』ってことはお前が小さい時からってことだ」
「俺の小さい時から…… どこに住んでるんだろう?」
「ロードアイランド州ってなってるな」
「どういうところ!?」
「知らないんだ、行ったことがない」
「幾つぐらいかな」
「そうだな……70代だろうな。外国旅行になるから年齢的にも早く来たいんだと思う。遠い国からお前1人を探して、そして今も探してる。返事、するだろ?」
「したい! 会いたいって、日本に来てくれたら嬉しいって!」
時間を見る。
「時差があるから今は……夕方くらいだ。電話番号も書いてあるから電話するか?」
目がキラキラしている。蓮は固定電話を引っ張ってきた。手紙の電話番号を見ながらプッシュボタンを押そうとした。
「ほら、受話器持って」
「なんで?」
「なんでって、お前のおばあちゃんだぞ」
「蓮が喋ってよ」
「なんで!」
「俺、英語喋れないよ」
蓮は固まった。
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