蓮の心、ジェイ知らず

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  「……忘れてた……」  呆然とする。どうしたらいいのか。まさか自分が電話するわけには行かないと思う。どんなに連絡を待ち望んでいるか。なのに代替品が電話してくるなんて。 「でも、お前」 「それからお祖母ちゃんが来たらずっとそばにいて。通訳がいないと」 「ちょっと待て」  蓮は座り込んだ。それは予定外だ。出来るわけがない。孫なのに自分がずっとそばで通訳…… 「お前、英語教える。覚えろ」 「ええ!? 無理だよ!」  2人は立ち上がった。 「なに言ってるんだ! おばあちゃん来てずっと自分で話さない気か!?」 「だって無理だもん!」 「頭いいじゃないか、すぐ覚えるって。お前はやれば出来る子だ!」 「俺、バカだもん、蓮はいつも『ばか』っていうじゃないか!」 「それはお前が可愛いこという時だ! 天然でボケかます時だ、ベッドでだ!」 「そんなことない、いつも言う!」 「バカ、いつもじゃない!」 「ほら、今言った!」 「ちょっと、あなたたち! いい加減にしなさい!!」  蓮の脳が機能不全に陥る。母の存在など頭から飛んでいた。 「おれ、なにいった?」 「再現できないことを言ったわ!」 「……ごめん、記憶も飛んだ。俺はなにも言ってない」 「現実逃避はやめなさい! この瞬間に一緒にいるんじゃなかったわ! 私買い物に出るからその間に好きなだけ思う存分おやりなさい!」  バタン! と勢いよくドアが閉まって、2人とも座り込んでしまった。間が空いてか細い声でジェイが言う。 「ごめんなさい」 「いや、俺こそ」  また、間が空く。 (母さん、帰ってくるかな……) 壊滅的なダメージに、ぼんやりとしかものを考えられなかった。  
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