514人が本棚に入れています
本棚に追加
「……忘れてた……」
呆然とする。どうしたらいいのか。まさか自分が電話するわけには行かないと思う。どんなに連絡を待ち望んでいるか。なのに代替品が電話してくるなんて。
「でも、お前」
「それからお祖母ちゃんが来たらずっとそばにいて。通訳がいないと」
「ちょっと待て」
蓮は座り込んだ。それは予定外だ。出来るわけがない。孫なのに自分がずっとそばで通訳……
「お前、英語教える。覚えろ」
「ええ!? 無理だよ!」
2人は立ち上がった。
「なに言ってるんだ! おばあちゃん来てずっと自分で話さない気か!?」
「だって無理だもん!」
「頭いいじゃないか、すぐ覚えるって。お前はやれば出来る子だ!」
「俺、バカだもん、蓮はいつも『ばか』っていうじゃないか!」
「それはお前が可愛いこという時だ! 天然でボケかます時だ、ベッドでだ!」
「そんなことない、いつも言う!」
「バカ、いつもじゃない!」
「ほら、今言った!」
「ちょっと、あなたたち! いい加減にしなさい!!」
蓮の脳が機能不全に陥る。母の存在など頭から飛んでいた。
「おれ、なにいった?」
「再現できないことを言ったわ!」
「……ごめん、記憶も飛んだ。俺はなにも言ってない」
「現実逃避はやめなさい! この瞬間に一緒にいるんじゃなかったわ! 私買い物に出るからその間に好きなだけ思う存分おやりなさい!」
バタン! と勢いよくドアが閉まって、2人とも座り込んでしまった。間が空いてか細い声でジェイが言う。
「ごめんなさい」
「いや、俺こそ」
また、間が空く。
(母さん、帰ってくるかな……)
壊滅的なダメージに、ぼんやりとしかものを考えられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!