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超大問題!
おばあちゃんに電話を入れるのは保留となった。あれから母の帰りを2人で待ったが帰っては来ず、メールが入った。
『佐々木さんたちとホテルで家を検索していますので』
この『ので』が、蓮には心地悪い。それに3人で家を探している。それがあの家を出た目的だったし早く落ち着きたいのも分かるが、このタイミングでそう言われるとさらに心地悪い。
「仕事しよう!」
蓮は勢いをつけて立った。ジェイはのろのろと立つ。
「俺、恥ずかしい」
「それを言うな! 俺なんかどうするんだよ」
母親の前で言うことじゃなかった。落ち着いてから反芻して、えらいことを言ってしまったと蒼褪めたくらいだ。
『可愛いことを言うからだ!』
『ベッドでだ!』
自分の言葉が自分の首を絞めている。
(せめて『ベッド』なんて言わなければ……)
だが、後の祭りだ。
ランチでは朝のハイテンションが消えた蓮は、ただ真面目に仕事をした。またなにかあったのか、と周りは思う。今日の蓮は感情と行動の起伏が激しい。
ちょっと距離を取った周りの中で、果敢に戦地に突っ込んでいくのは、やはり哲平。
「どうしたの? 元気無いね」
「なにも聞くな」
「今朝はえらく元気だったって聞いてたんだけど」
「だから、なにも聞くな。落ち込んでるんだから放っておいてくれ」
哲平は花から戸籍の件を聞いている。だから兄弟関係の修復は別として、落ち込んだ原因は別にあるのだろうと考えた。
「ね、問題解決したはずだよね?」
小さな声で蓮に聞く。それでなくてもランチ時は賑やかだからジェイの耳には届かない。
「取り敢えず、した」
「だからテンション高かったの?」
「いや」
「蓮ちゃんだけならまだいいけど、ジェイも落ち込んでるし。夫婦間のことなら首は突っ込まないけど」
そう言われて、別のことを思い出した。
(いや、哲平は忙しいよな。やっぱり花か)
「俺なにも活躍できなかったから何かあるなら相談乗りたいんだけど」
時計を見る。12時25分。
「お前忙しいよな」
「どういう意味で?」
「ジェイに英語を叩き込みたいんだ」
「英語? どうしたの、急に。海外旅行でもするの?」
「食い終わったらちょっと廊下で待っててくれるか? そんなに時間取らないから」
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