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蓮がさらっと言う。
「Guys,Don't overdo it. You’re making my dearest cry.」
(やり過ぎるな。俺の大事なヤツを泣かせるな)
「うわぁ…… 勘弁してよー」
柏木が悲鳴じみた声を上げる。
「やってらんない」とは、和田。
「ばかばかしい」これは中山。
「よく言うよ、全く!」
そして坂崎は「ぬけぬけと言いやがって。奢れよ、なんか」
怒ってそこを離れて行ったジェイの替わりに伴が来た。
「ね、今蓮ちゃんなんて言ったの?」
「俺の大事なヤツを泣かせるなって言ったの!」
和田の解説で目を丸くする。
「すっげ!」
「公衆の面前でさ!」
柏木が大きな声で言ったが、蓮は澄ました顔をしている。どうせ周りには何を言ったのか分からない。ジェイに英語が分かっていたら頭が沸騰していただろう。
ジェイは今スタッフルームにいた。すごく頭に来ている。こんな気持ちは滅多に持たないのだが、みんなが自分をからかいに来たのだと思い込んでいた。だが怒り方がちょっと違う。カリカリ怒っているのではなく、ぷんぷん、怒っている。
蓮が顔を出した。
「ジェイ、機嫌治ったか?」
「嫌いだ、みんな! 俺が英語出来ないの知ってるのに全部英語だった! ここは日本なのに!」
口が尖っているが、蓮は違うことを考えている。
(こいつ…… どうしよう、抱きたくなるじゃないか)
そばに寄って囁いた。
「今夜、しようか」
「ばか! 俺が怒ってんのになんでそんなこと考えてるの!?」
可愛いが、その時ぽわんと母の顔が浮かんでしまった。咳払いをする。
「あのな、みんなお前のためにしたんだぞ」
「なんで? なんでイジワルが俺のためなの?」
まだ唇が突き出ている。そこから無理矢理目を離した。
「英語出来ないだろ? だから少しでも教えてやろうと思ったんだよ」
「……俺が今困ってるって知ってるの?」
「そうだ。だからあいつら来たんだよ。お前のために」
「……俺、怒っちゃった」
「いいさ。いきなりあのレベルじゃお前も分かんないよな。俺から言っとく」
「ううん、俺が謝る」
微笑ましくなってくる。なぜみんなが知っているのかと追及もせずに、悪かったと反省しているジェイがやはり可愛い。
戻るとジェイが4人のところに立っていた。大きな声で謝罪して頭を下げた。
「I'm sorry! ごめんね、怒っちゃって」
少なくとも一つは知っていた。
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