衝動

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     やっと晶子と利恵が来た。佐々木は腰が痛むからゆっくり歩いてくる。 「お母さんの知ってる人? やっぱり河野の家の人なんだね」 「いいの。ジェイは先に帰っていてちょうだい」 「でも俺に用があるって言われたんだけど」  晶子はジェイに笑顔を向けた。 「ジェイ、お帰りなさい。この人は私に用があるのよ。私のいるところを聞こうとしてたの。そうでしょう?」  義母に見つかっただけでもうろたえている。 「そうよ、あなたなんかに用があるわけ無いじゃない!」 ジェイには訳が分からない。この女性は突然自分を呼んだ。つまり自分を知っているのだ。 「お母さん、この方はどなたなんですか?」  次の晶子の言葉で郁子は全身、カッとなった。 「この人は……使用人よ。あなたが気にするような人じゃないわ」 「なんですって!? 私は」  間に利恵が入った。 「ジェイ、ってあなたですね? 私はずっと奥さまのお世話をしている佐々木利恵と申します。お会いできてとても嬉しいわ」 「利恵さん、あなたは引っ込んでいなさい!」 「後は私が聞くわ。利恵さん、ジェイと先にお店に行っててもらえるかしら」  星野もそこに口を挟む。ジェイに囁いた。 「店長、行こうよ。内輪揉めみたいだしさ、ああいうのに混じると厄介だよ。離れた方がいいって」 「でも悪いよ、俺も関係あるみたいだし」  利恵がジェイの腕を取って歩き出す。 「ごめんなさいね、あの人我がままなのよ。私は使用人頭だったけどずい分困らされたわ。奥さまがここにいるだろうって聞き出したかったんじゃないかしら。きっとクビになったことで文句があるんでしょう。本当に鬱陶しい人!」 「本当にいいんですか、俺いなくても」 「奥さまがいるんだから大丈夫。それよりお店を見せていただいていい? あ、あそこを歩いているのが主人なの。腰がとても悪くて」  それを聞いてジェイは走って行った。声をかけて頭を下げ、歩くのを支えてくる。 「……いい人ね」  ぽつっと漏らした。星野が答える。 「本当にね。あの店長さんがいるだけでお店がほわっとあったかくなるんだ。とても優しい人だよ」  利恵は晶子に目をやった。晶子は利恵に店の方へ目配せをした。4人で歩き出す。   
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