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「ただいまー」
「お帰りなさい、お疲れさま」
「ジェイは?」
「もう眠ったわ。ちゃんとお薬飲ませたから」
「今日は大丈夫だった?」
「ええ。ババ抜きの練習頑張ってたわよ」
「また? 今日はあいつ、勝った?」
「だめ。全部顔に出ちゃうんだもの、多分ずっと勝てないと思う」
蓮が脱ぐものを次々片づけていく。
「いいよ、やんなくて。先に寝てたっていいんだ」
「でも」
「その方が俺も安心だから。明日からは待たなくていいよ」
そうか、と思う。自分が来てから2人はまともに自分たちだけの時間を持っていない。ゆっくり探せばいいと言われたが、早く家を探そうと決めた。
「そう言えば……」
辺りを見回した。手紙がない。
「どうした?」
「ジェイに手紙が来てたの」
「手紙? ジェイに?」
「それもアメリカから。アンナ・シェパードって書いてあったと思う。知ってる?」
「知らない。シェパード? ……ジェイの身内ってことか? 今頃……」
確かに父方の親戚のことを考えたことが無かった。ジェイからもその話は出なかった。
(でもお父さんが亡くなったのは5歳の時だよな…… アメリカに行ったことがあったとしても覚えてるわけがない)
宮里の家にそのまま引き取られてしまったのだから、きっと頭に浮かびもしなかっただろう。あの宮里の祖父母がアメリカと連絡を交わすなど考えられない。
母がテーブルの上にあったはずだと言うが、探しても見つからない。
「どこに行ったのかしら。あなたに読んでもらうんだって言ってたけど」
「俺に? どうして」
「英語が分からないからって」
やれやれ、と言う顔になる。
「あいつ、英語が苦手だから」
「でもハーフなのに」
「しょうがないだろ、アメリカ人と話したことさえ無いんだから。封を開けてないってこと?」
「そうなの。興味なさそうで」
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