蓮の心、ジェイ知らず

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   蓮は寝室に入ってみた。もしかしたら読んでほしくて持ってきているかもしれない。  すやすやと眠っているジェイの手に、その手紙が握られていた。 (やっぱり気になってるじゃないか) そっと握りしめた手紙を抜く。封が開いている。 (明日ジェイと一緒に読もう) 先に読むのはよくない。けれど封筒に入っているのは手紙だけじゃなさそうだ。少し硬いものが入っている。そっと中を覗いた。 (写真?) どうしても気になって取り出した。きっと写真だけはジェイも見ただろう。  そこには優しい顔をした女性と手を繋いだ男の子が写っている。 (これはジェイか?) それほどよく似ていた。けれどどう見てもアメリカ人だ。はっとした。 (お父さん、か? じゃこの女性は……) 思い切って手紙を取り出した。蓮の顔が驚きに満ちていく。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ジェローム 今度こそこの手紙があなたに届きますように。 あなたの祖母に当たるアンナ・シェパードです。 ずっとあなたを探していました。 お母さんの引っ越した先の宮里さんにも、近所に住んでいる日本人に書いてもらって手紙を何回か送りました。 でもお返事をもらえませんでした。 宮里さんから手紙が戻って来るようになってしまい、ハリーのいた会社の方にお願いして調べてもらったんですが、お2人とも亡くなっていたんですね。 悲しいことです。とても残念です。 ジェローム あなたは1人でいるのですか? 心配でたまりません。 ハリーからあなたの写真を何枚ももらいました。 本当にハリーにそっくりで驚いたものです。 ハリーの写真を同封しますね。 そばに立っているのが私です。 あなたの声が聞きたい。 あなたに会いたい。 あなたを抱きしめたい。 どうか、あなたの元に届いてほしい。 そして連絡をください。必ず会いに行くから。 待っています。 アンナ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
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