2 真莉愛と翔之介

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2 真莉愛と翔之介

 彼女に思い切って告白したのは、2年生になってからだった。 「南のことが、俺は好きになった!」と部活が終わってから告げた。 「どこが好きなの?私も榎の声とか勝気な性格とかが好きかも!」 「俺は、顔もスタイルも好きだけど、皆のために一生懸命になっている姿が好きだ!」  お互いの気持ちが伝わり、俺にとって初めての彼女ができた。それからは、部活動が終わるのが待ち遠しく、皆が帰った後にいつまでも話し込んでいた。 休みの日には、カラオケや買い物に出掛ける事もあって、二人だけのデートを楽しんだ。デートといっても、俺からアクションを起こすのは気が引けて、手もつないだ事もないし、ただ一緒にいたというのが正しかった。進展したのは呼び方ぐらいで、俺はマリと彼女を呼び、彼女は翔君と呼ぶようになった。  夏休みの部活が休みの日に、二人で動物園に行った。彼女は嬉しそうに動物を見て、いつになくはしゃいでいた。園内を歩いている時に、手をつなごうと言ってきたのは彼女だった。俺は暑くて手に汗をかいていて恥ずかしかったが、彼女が手を差し伸べてきたのでそれに応じた。彼女の手は柔らかく、女の子と手をつなぐのはいつ以来かと考えながら歩いていた。  軽くファーストフードを食べ、カナダの事や家族の事を彼女から聞いた。 「マリは男子と交際した事はあるの?」と気になっている事を訊いた。 「交際というか、カナダで隣に住んでいた子と仲が良かったよ。」  学校で噂になっている事を、もう少し突っ込んで訊きたかったが、訊き出す勇気はなかった。今の真莉愛が好きで、過去はどうでもいいと思った。  帰り道、なぜか口数が少なくなって、気まずい雰囲気になった。 「ねえ、翔君。キスしてもいいよ!」と歩きながら、真莉愛が言ってきた。 「えー?キスしても良いの?」  俺は驚きと喜びで、声が上ずっていた。幸い人通りもない木蔭で、彼女は目をつぶってキスを待っていた。俺はどうすれば良いのか分からずためらっていたが、唇を付ければいいんだと、緊張で震える唇を彼女の唇に合わせた。それは一瞬だったが、温かさと柔らかさを感じる事ができて満足していた。すると、今度は彼女が唇を寄せてきたので、あわててしまって歯が当たり気まずい思いをした。
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