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父は、よろよろと棺に近づき、伯父の頬に、触れた。そっと、優しく。愛しい人に触れるように。
父と伯父は仲が良かった。二人を知る誰に聞いても、そう言うだろう。
この年になっても、休日に二人で釣りに出かけることもあったほどなのだから。
杖を付き震える祖母の背中を、母がさすり始めた。それを見た私ははっとして、手をつないでいた次男を夫に託し、棺の反対側にいる父のところへ。
父の背中を擦る。父の背中は大きいのに、今はこんなにも小さく頼りなく感じてしまう。
祖父母は、大切な息子を、父は唯一の兄弟である兄を失った。
私の大切な人たちが大切な人を失った悲しみが、痛いほどに流れ込んでくる。
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