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普段なら、「まやちゃん、いらっしゃい」と温かく迎え入れてくれるみんなの前を、無言のまま通り過ぎた。
用意されていた座布団に、そっと正座した。
枕元には、3本のお線香が薄く煙を立てていた。
硬そうな山盛りのご飯には、垂直にお箸が刺さっている。
……まるで。これじゃまるで。
靄のかかっていた現実が、徐々に鮮明に見えてきてしまう。
「おじちゃん……」
消えそうな声で、呟いていた。
まやだよ。きたよ。
伯父は、ただ眠っているかのように安らかな、優しい顔をしていた。その顔を見た瞬間、この悲しい話がはっきりと現実になってしまった。
今まで我慢していたわけでもなかったのに、一気に涙が溢れ出した。
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